中国と関係国の海洋主権紛争への米国の介入に最近また新たな動きがあった。ヌーランド米国務省報道官は中国の三沙市設立について「一方的行動だ」「こうした行動を継続するのなら非常に懸念される」などと勝手なことを述べた。日本の玄葉光一郎外相も衝撃的な情報を2つ明かした。1つは米国によるオスプレイ12機の沖縄配備について「米国の戦略上の必要であり、日本の安保上の必要でもある。中国の海洋進出が余りにも目につくからだ」と公言したこと、もう1つは「尖閣諸島(釣魚島)は日米安保条約の適用対象であり、有事の際米国は日本と共同で対応することをクリントン米国務長官と確認した」と明確に表明したことだ。もしこれが事実なら、中国の核心的利益に米国が介入するという新たな危険なゲームとなる。(文:袁鵬・人民日報海外版特約論説員、中国現代国際関係研究院米国研究所所長。人民日報海外版コラム「望海楼」掲載)
米国は南中国海の主権紛争において「特定の立場を取らず」「どちらの側にもつかない」と再三表明している。だが三沙市の設立という中国の主権の範疇に明確に属す正常な行動に対して大騒ぎする一方で、ベトナムやフィリピンによる最近の一連の挑発的言動に対しては見て見ぬふりをし、心を動かさずにいる。どちらの側についているのかは誰の目にも明らかだ。
米国は海洋主権紛争において各国が国際法と関連規則を尊重することを希望すると再三強調している。だが米日同盟間の二国間安保条約を公然と国際準則よりも上に置き、釣魚島問題において公然と日本に軍事的保証を与え、しかも日本の政治屋が「島購入」の茶番劇を続けざまに演じている敏感な時期に沖縄に先進戦闘機を配備し続けている。その魂胆は口に出さずとも明らかだ。米国は中国側と共に新しいタイプの大国間関係の発展とアジア太平洋地域における良好な相互作用の実現を探りたいと再三主張している。だがする事なす事、全くの言行不一致で、心にもない言葉に聞こえる。
ほどなくして米国の対中政策は「イデオロギー・シンドローム」に陥った。つまり人権、自由、民主の価値観を口にするたびに、ほとんど何かに取り憑かれたように夢中になってしまうのだ。その結果はどうだったか?中国が自らの社会制度と政治制度を維持しつつ経済的飛躍と国家の富強化を達成したことで、米国の対中イデオロギー攻勢は大いに気勢をそがれたのだ。
今日米国は中国関連の海洋主権紛争問題において、またも何かに取り憑かれたように夢中になっているようだ。これは関係国と中国との摩擦を利用してアジア太平洋地域への軍事投入を強化していること、中国人民の感情を軽視して重大で敏感な問題において何度も火に油を注いでいること、さらには海洋問題に介入することで自国の力を発揮し、中国の動きを抑え込めると得意げに影で笑っていることに現れている。クリントン米国務長官は先日発表した長文「スマートパワーの技術」で、オバマ政権がいかに聡明で、「スマートパワー」を運用して「大戦略」を実現しているかについて事細かに論述しており、文章には得意げな気持ちが滲み出ている。
だがもし上述の小細工を本当に「スマートパワー」と見なしているのだとしたら、オバマ政権は遅かれ早かれブッシュ前政権の覆轍を踏むことになるだろう。当時ブッシュ大統領は対テロ戦争への各国の支持を何をしてもよい事の保証と誤って受け止め、最終的に対テロの範疇を超えて中東に深くはまり込むという後戻りの出来ない道を歩み、米国が一貫して重んじてきた戦略の均衡を失うこととなった。
今日のオバマ政権も海洋紛争への介入に対する一部の国の歓迎を、さらに大きな戦略行動を起すための衝動に転化しているようだ。中国および他の国との関係を処理する際にバランスを失い、中国と戦略競争を繰り広げようと考えたのだ。その結果、中東の砂漠から抜け出した米国は今度は広大な南中国海と東中国海にはまり込むことになる可能性が高い。キッシンジャーやブレジンスキーなどの戦略家を含む有識者が早くから認識しているように、米国が本当にアジア太平洋に根を下ろしたいのなら、中国との効果的な協力が不可欠だからだ。
中国を敵と見なすアジア太平洋政策は結局は短命に終るか頓挫する。時代の条件がそうさせるし、中米の利害関係によってもそう決定づけられている。ソフトパワーに通暁している米国の為政者達がもう少し大きな知恵を持ち、小賢しさを減らし、小細工を弄してかえって失敗することのないよう願うばかりだ。
「人民網日本語版」2012年7月27日