ASEAN関連首脳会議の本来の意図は経済統合であり、ASEAN諸国の根本的目標の1つは2015年にASEAN経済共同体を完成することである。外部勢力と域内の溝に押される形で、この基調からの危険な乖離が生じている。目に見える形で、あるいは見えない形で「経済」と「政治」の入れ替わりが起きているのだ。(文:楊子岩。人民日報海外版コラム「望海楼」掲載)
「日本の祥林嫂」(※)こと野田佳彦首相は19日の東アジア関連サミットで、再び領土問題を取り上げたうえ、南中国海問題で中国と係争を抱える国々に、団結して「国際法」に訴えるよう呼びかけた。インフルエンザにかかったフィリピンのアキノ大統領もASEAN関連首脳会議で活力を取り戻し、「気力に満ちあふれた」様子でプノンペンに姿を現わし、自らの提言した「西フィリピン海(中国の南中国海)で地域の平和と安定を守る6原則」を売り込んだ。自らの自信不足を覆い隠すため、秘書官が代わりに「大統領はプノンペンで意志と意図を表明する機会が10回ある」と述べた。
オバマ米大統領の東南アジア歴訪について、多くのメディアはアジアが米外交の軸心になったと解釈している。これは少しもおかしなことではない。どの政治家も前期の政策を継続するものだ。だがオバマ大統領の第1期の外遊の経験から導き出される結論は必ずしも人々を満足させるものではない。オバマ大統領は第1期の初の外遊でエジプトを訪問し、イスラム世界全体への好意を表明した。ただ、イスラム世界の熱狂的な反米のうねりによって、オバマ大統領の「ノーベル平和賞」は面子を失う結果となった。
米日比首脳の挙動は中国の政治・経済力の大幅な増大による焦燥の反映だ。東アジア地域は「非対称」な力を持つ中国を愛と恐れの矛盾した心理で受け止めている。米日は東アジア地域のこうした心理を利用して、政治的議題を経済的議題にすり替え、ASEANを強引に巻き込んで勇敢に突撃する先兵に仕立て上げ、中国の台頭を牽制しようと企てている。
中国をめぐる様々な声が主客転倒を起こし、真の基調である「経済」を埋没させている。現在、世界経済の回復基調は弱まり、国際・地域情勢は複雑に入り組んでいる。ASEAN関連首脳会議の参加国がすべきは、連携して金融危機に対処することであり、他のことではない。
ASEAN各国が中国を仮想敵国と見なすはずはない。中国は1997年のアジア通貨危機の際に、自国の経済が下降するリスクを冒してまで、人民元の切り下げを行わなかった。そのような国が敵であるわけはないからだ。他国の生死は構わず、自国通貨の切り下げばかり考えていた一部の国々のやり方と比べると、その優劣は誰の目にも明らかだ。