慰安婦問題についての誤った発言について、籾井氏はすでに口頭で謝罪し、発言を撤回した。だがこれは決して籾井氏の本意ではない。2月12日のNHK経営委員会での美馬委員の質問に、籾井氏は記者会見の発言の全文を読んだかと問い返したうえ、「読んだのなら、それでもなお私の発言に問題があると思うのか?」と述べた。少しの反省の気持ちもないのだ。
後ろ盾を得て怖いもの知らずとばかりに舞い上がったのか、籾井氏は就任から数日も経たぬうちに安倍首相に様々な迷惑をかけた。籾井氏は失言に加え、就任早々、堂元光副会長以外の理事10人に辞表を提出させた。つまり、言うことを聞かぬ理事をいつでも除名できるということだ。情報が伝わると、籾井氏は「一般企業ではよくあること」と強調した。
これまでの籾井氏の言動は多くの視聴者から批判されただけでなく、内部の労働組合でさえも2月26日に声明を発表し、NHKが現在の困難な状況を脱するための手段を早急に講じるよう籾井氏に要求した。だが安倍内閣に支えられた籾井氏の会長の座は、差し当り安泰のように見える。
今回のNHKの人事をめぐる騒動と会長の失言は、問題のうわべほど単純なものでは決してない。だが大軍を展開する前には、まず糧秣を準備するものだ。憲法改正という目的を達成するためにメディアの雰囲気作りをするのは、安倍氏による事前準備とも言える。だが物事は人間の計画通りには進まぬものだ。籾井氏の止まぬ失言、長谷川三千子氏、百田尚樹氏の相次ぐ徳を欠いた言動によって、後ろ盾の面目はすでに丸つぶれだ。徒党を通じてNHKをコントロールしようとする安倍氏の虫のいい計算が思い通りにいくのは困難だろう。(編集NA)
(文:趙剛・中国社会科学院日本研究所日本問題専門家)
「人民網日本語版」2014年3月11日