習近平国家主席が欧州歴訪を開始し、中国・EU関係は新たな春を迎えた。その背後には中国・EU関係をめぐる、3つの戦略的チャンスが潜んでいる。中国の夢とEUの夢が、共に発展し、互いに促進しあうチャンスの時期を迎えたのだ。(文:王義桅・中国人民大学国際関係学院教授・EU研究センター副センター長 人民日報海外版コラム「望海楼」掲載)
まず、国内の面から見ると、改革というチャンスを迎えた。中国は今、改革を進化させており、EUは一体化を進めている。このことは双方の協力に巨大なチャンスを提供した。中国とEUは、それぞれ「2020年計画」を制定している。中国共産党第18期中央委員会第3回全体会議(三中全会)で採択された「改革の全面的深化における若干の重要な問題に関する中共中央の決定」では、2020年までに、重要な分野と鍵となる部分の改革において決定的な成果をあげ、各方面の制度をさらに成熟化させ、定着させることが提起された。一方のEUは、2010年に新しい中期成長戦略「欧州2020(Europe 2020)」を打ち出し、スマートな発展、包括的な発展、持続可能な発展といった理念を提唱した。欧州債務危機の後、一体化の流れはますます加速した。昨年11月の第16回中国・EU首脳会議で採択された「中国・EU協力2020戦略計画」は、双方の2020戦略を合わせたものだ。同計画は、中国・EUの4分野(平和と安全、繁栄、持続可能な発展、人的・文化交流)の協力をめぐり、93件の建議を提出、中国とEUはすでに改革のパートナーとなった。
長期に渡り、中国とEUは互いを主要な経済貿易パートナーと位置づけてきたが、それぞれの国内分業体制を見ていくと、中国では総理が主に経済貿易を担当し、EUは内閣(欧州委員会)が対外経済貿易事務を担当する。ドイツなどのEU諸国も内閣制を実施しているため、中国・EU関係は「総理級」だったと言える。現在、双方の体制はいずれも格上げされた。「リスボン条約」の発効に伴い、欧州理事会議長(EUの大統領と言える)が就任し、中国では改革の全面的深化指導グループ長に習近平氏が就任した。これにより、改革のパートナーである中国とEUは、国内体制面も格上げされたことになる。習主席は今回のEU歴訪で、中国国家元首として初めてオランダ、EU本部を訪問するほか、8年ぶりにドイツを訪問する。格上げの成果がここからも伺える。
次に、2カ国関係の面から見ると、アップグレードというチャンスを迎えた。ここ10年あまり、中国はEUにとって第2の貿易パートナーであり、EUは中国にとって最大の貿易パートナーだ。そして今、中国・EUの経済関係は、貿易主導から投資・貿易の2輪駆動モデルへと、経済貿易主導から、経済・政治・人文の3輪駆動へとアップグレードしつつある。中国・EU関係は、すでにハイレベルな経済貿易対話メカニズム、戦略的対話メカニズム、人文交流メカニズムの3大柱を確立した。「リスボン条約」の発効後、中国・EUの投資協定締結に向けた交渉が開始した。もし合意に達すれば、自由貿易協定(FTA)締結に向けた布石となる可能性がある。2012年、中国のEU諸国への投資額はEUの対中投資額を上回った。双方の中央銀行は2013年、総額3500億元(450億ユーロ)の通貨交換協定(通貨スワップ協定)に調印(期間は3年間)。双方の経済関係はよりバランス化し、より互恵的になった。