ベトナムでの反中デモは、暴力、破壊、略奪・放火などの暴動にエスカレートし、中国の国民や国際社会を震撼させている。ベトナムでの反中暴動によって、少なくとも2人の中国人が死亡し、100人以上が負傷した。ベトナム政府は、暴動に加わった多くの暴徒の身柄を拘束し、中国政府はベトナム政府に厳正な申し入れを行った。中国は、ベトナム政府が自国民に対するコントロール力を失っていないことを信じている。また、中国政府には、中国国民と中国企業の財産損失について、ベトナムに損額賠償を求め、被害に遭った中国国民のために正義を貫く力を備えている。(文:梅新育・商務部研究院研究員。人民日報海外版コラム「望海楼」掲載)
今回の反中暴動は、中国と国際社会に対して、以下3点の警告を示した。
1 海外の投資保護体制を完備する上で、政治的リスクは十分に考慮する必要があること
多国籍経営における政治的リスク対策は、「事前対策が主、事後対応は従」なる原則を守らなければならない。最も重要なことは、事前に自ら対策を講じて政治的リスクに直面する確率を下げることだ。政治的リスクに遭遇した後に補償や損害賠償を請求することで解決を図るのは、あくまでも二次的な策だ。対外直接投資額で世界上位に躍り出た中国は、地域経済一体化機構において、地域投資保護体制の構築を前向きに推し進め、完備する努力を行わなければならない。このうち、中国は、アセアン諸国、オーストラリア、ニュージーランド、ロシア、中央アジアなどの国・地域と地域投資保護体制を最優先に設立・完備するための一番の選択だ。
2 国際社会は、ベトナムの投資価値について再考を迫られたこと
今回の反中暴動を通じて、国際投資家や輸入企業は、投資国と供給源国のマクロ経済の枠組の下での政治的安定性を一層重視しなければならないことに気づかされた。多くの新興市場経済体の政治的安定性は、経済的要素に大きく左右される。「経常項目収支の輸入超過」「財政赤字」「貨幣価値の下落」「輸入型インフレ圧力」の4者がいったん悪循環を形成してしまうと、企業経営を直接妨害するだけではなく、住民の生活レベルを引き下げ、労働争議を引き起こす可能性が高い。このため、ベトナムは労働争議が多発する国となった。