17日付豪経済紙『オーストラリアン・ファイナンシャル・ レヴュー』は、オーストラリアと中国の自由貿易協定によって、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の先行きがさらに不透明になると報じた。中豪FTAの覚書が17日に調印され、中米のアジア太平洋経済一体化構想をめぐる駆け引きが激化する。中国はASEAN10カ国と、中国、日本、インド、韓国、オーストラリア、ニュージーランドを含む東アジア地域包括的経済連携(RCEP)を支持してきた。中国商務部の副部長は17日、中豪FTAがRCEPの早期実現を促進することに期待すると表明した。その一方、米国は中国を除くTPPの推進を計画している。記事によると、オーストラリアは本来、二つの構想の間でバランスを取ろうとしていた。米豪のTPP交渉は昨年末に終了していなければならなかったが、TPA(大統領貿易促進権限)法案が議会で否決された。オーストラリアのロブ貿易大臣は17日、米国に対して「もう時間が残されていない」と警告を出した。そこでオーストラリアは地域内の最も重要な貿易相手国との、自由貿易協定の締結に向けた取り組みを強化した。中国とFTAの覚書に調印したほか、オーストラリアは今年中にもインドと協定を締結する可能性がある。
NYタイムズは16日、TPPを失えば、オバマ大統領のアジア太平洋戦略が空振りに終わると報じた。オバマ大統領は最近、中国の影響力を制御できるTPPには重大な意義があるとほのめかし、「中国がルールを作ろうとしているならば、なぜそれを放任するのか?」と発言した。しかしTPPは今や崩壊の運命に直面しており、中国が提唱するRCEPに活力を注ぎ込み、かつアジア太平洋の同盟国の米国の指導力に対する懸念を強めている。ロイター通信の17日の記事によると、甘利明経済再生担当大臣は同日、日本が米国主導のTPPの交渉を楽観視し続けることはないと失望を示した。
NYタイムズは16日の別の記事で、シンガポールのシャンムガム外相が米国で演説した際の、次の発言を引用した。「東アジアとアジア太平洋の歴史が現在書き換えられているが、あなたたちは運転席に乗っていない。米国は現在が多極化した世界であり、すべての権利を把握できる世界ではないことを理解しなければならない。米国は依然として最も重要な強国、超大国であり、多くの情勢の成り行きに影響をおよぼすことができるが、すべてを完全にコントロールすることはできない」、「中国の台頭を受け入れなければならない。そうしなければ、新たな多国籍組織が次々と設立され、米国が完全に除外されていることに気づくだろう。米国の影響力は強化されず、むしろ低下する」
シャンムガム外相は、「米国にとって、地域の一部になるか、この地域を離れるかという残酷な選択肢が突きつけられている。貿易こそが戦略だ。米国が有益な役割を演じられなければ、地域の枠組みと情勢に影響をおよぼせるのは、第7艦隊のみとなる。しかしこれは常に役立つハードルではない」と指摘した。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2015年6月18日