パリのテロ事件で、100人以上が死亡した。フランスのオランド大統領は、これはフランスに対する戦争行為であると表明した。イスラム国もSNSで、パリのテロ事件の犯行声明を出した。交戦状態に陥っているのが、フランスとイスラム国であることは、すでに明らかだ。しかしオランド大統領は、イスラム国に宣戦布告しなかった。戦争であれば、フランスはNATOの力を借り、イスラム国の挑戦に共に応じなければならない。オランド大統領もNATOの加盟国も、長期的な対テロ戦争の準備を整えていないようだ。
オランド大統領は口ではこれを戦争と言ったが、この戦争のために準備を整えていない。現状を見る限り、オランド大統領は対テロ戦争に気乗りしておらず、米国の9.11同時多発テロ後のブッシュ元大統領の対テロ戦争との間には大きな温度差がある。
9.11と根本的に異なるのは、パリの惨劇が「戦時中」に起きたことだ(この戦争の存在を意識している人はいなかったが)。フランスは今年9月より、シリア国内のイスラム国への空爆を開始し、昨年よりイラク国内のイスラム国への空爆を開始した。この戦争は「宣戦布告」されなかったが、すでに着実に始まっていたのだ。フランスとその同盟国にとって、空爆は戦争ではなく「対テロ作戦」だが、イスラム国にとっては戦争だ。しかも戦場はシリアとイラクに位置する。このテロ組織は建国を宣言しているが、その合法性を認めている国はない。そのため自ずと、一般的な意義の「戦争」の観念との間に温度差がある。パリの惨劇はフランス版9.11だったと言うよりは、真珠湾、戦線の延長だったと言うべきだ。
イスラム国を中心とするテロリズムはグローバル化している。パリの惨劇がその証左だ。念入りな計画と周到な実施は、この国際的で厳重な警備体制が敷かれている大都市に重傷をもたらした。しかしながら反イスラム国の陣営は、まだ形成されていない。これは戦略的麻痺の状態、もしくはなすりつけ合いの状態だ。
米国の最初だけ勢いの良い対テロ戦争は、勝利を手にしていない。しかしこれはテロリズムがより深刻化していると言うよりは、国際社会、特に大国がまだテロリズムを最も重要な脅威としていないことを意味している。これは第二次大戦中のファシズムと同じだ。対テロ戦争は一種の「コモンズの悲劇」の泥沼に陥っている。テロリズムは世界的な脅威であり、ある国がテロ対策に資源と精力を注ごうとすれば、それは世界の安全のための負担を意味する。
また冷戦時代の戦争マシーンのままの大国は、この新しい対テロ戦争の準備を整えていない。これは仮想空間における戦争で、世界のテロリズムネットワークに広がっており、前線と後方の区別にほとんど意義がなくなっている。
イスラム国はテロリズムの中軸になっている。テロ対策の陣営はまだ形成されていない。各国は各自で対応し、自国を守ろうとしている。この間違った発想そのものが、現在の世界最大のリスクであるのだ。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2015年11月17日