トルコによるロシア機撃墜事件から半月あまりが経過するが、双方は世論・外交・テロ対策・軍事などで駆け引きを展開している。両国関係は依然として冷え込んでおり、底打ちがいつになるかは不明だ。
両国はかつて良好な関係を維持していた。双方の経済・貿易・エネルギー・軍事・人文を巡る交流と協力が力強く促進されていた。まさにそのために、ロシアはトルコとイスラム国(IS)のあいまいな関係に遠慮していたが、撃墜事件を受けロシアは遠慮する必要が完全になくなったわけだ。
ロシアは、トルコがイスラム国の石油の主な購入者であり、エルドアン大統領と家族がイスラム国との取引に関与しているというスクープを何度も報じている。米国は「信用できない」と表明し、エルドアン大統領も真っ向から否定している。ところが米国はトルコに対して、イスラム国が支配する、90キロ以上に渡るトルコとシリアの国境線を封鎖するよう求めている。そこには興味深い秘密が隠されている。
トルコは当初、ロシア機が領空侵犯したと強硬な姿勢を示していたが、後には「悲しい」「残念だ」などと表明し、態度を軟化させた。しかしながらトルコも完全に弱気になっているわけではない。例えばロシアが最も重視する謝罪については口を緩めず、硬軟織り交ぜている。
双方は共に強気な発言をし、互いに譲ろうとしていない。ロシアのプーチン大統領はシリアに展開するロシア軍に対して、「再び挑発されれば、情け容赦なく反撃すること」と命令している。トルコのチャブシュオール外相は、ロシアが「すべての機会」を利用しトルコを対象とした作戦を起こしていると批判し、ロシアに対して冷静になるよう求めた上で、トルコの「我慢には限界がある」と称した。
ロシアは当初から、トルコと戦争するつもりはないという大原則を示していた。ロシアの外相は要請に応じ、全欧安保協力機構の外相級会議の機会を利用し、トルコの外相と会談したが、結果は得られなかった。撃墜事件後、両国の政府高官が正式に接触したのはこれが初めてだ。ロシアはこれによりトルコが仕掛けた和平交渉の攻勢に応じ、弱みを握らせなかった。またロシアはトルコに対して、ロシア人のトルコ旅行の禁止、両国のビザ発給免除の停止、軍事交流の一時停止、トルコの農産物の輸入禁止といった一連の経済制裁を行った。
しかし客観的に見ると、ロシアの制裁は適度かつ自制的と言える。ロシアはトルコにとって天然ガス主要輸出国であるが、ロシアは輸出停止について一言も触れていない。これは賢明な措置かもしれない。
撃墜事件はなおも尾を引いている。ロシアは象徴的な意義を持つ威嚇を継続している。双方による相手を刺激する動きが相次ぎ、両国関係の短期間内の修復は困難と思われる。イスラム国掃討を大前提とし、両国関係がどのように変化するかについては、今後の経過を見守る必要がある。(筆者:呉正竜 中国国際問題研究基金会高級研究員、元在外公館大使)
「中国網日本語版(チャイナネット)」2015年12月15日