・EUの衰退が加速
EUが新年に迎える最大の難題は、空前の規模となっている難民と、それに伴い強まる移民および欧州一体化への反発だ。これによりEU内部に修復不可能な亀裂が生じ、EU諸国の政治に変化をもたらす。
EU内部では、難民問題で意見が一致していない。難民に寛容な政策を主張するドイツは政策の調整を強いられており、難民問題はEUの生存を脅かす「時限爆弾」になる。難民問題とそれに伴い生じるテロの危機は、英国のEU離脱の国民投票を複雑化させる。国内外の情勢の影響を受け、EU離脱が決まる可能性がある。これは誰もが望まぬ局面であり、あたかも「ダモクレスの剣」のように英国とEUの上に吊り下げられている。
・中東動乱が続く
中東の動乱が長期化している。この地域にはさまざまな民族、宗教、宗派などを巡る食い違いが存在し、かつ大国が争奪戦を展開する戦略的要衝、エネルギー供給地でもある。米国が数十年に渡り、中東の秩序を主導している。米国が利己的な政策を進めていることから、パレスチナとイスラエル、シーア派とスンニ派の対立が激化しており、イスラム国などの過激派勢力の台頭を助長している。イスラム国が各国に被害をもたらすなか、各国は本来ならば協力し対応するべきだ。ところが各自の計算があり、イスラム国が猛威を振るい続けている。昨年末のロシアとトルコの対立、最近のサウジアラビアとイランの国交断絶により、国連主導のシリア問題の政治的な解決がより困難になり、中東諸国の関係が複雑化している。中東の動乱は今後も続き、さらに激化する可能性もある。
・中国の国際的な影響力が拡大
中国にとって、新年は極めて重要だ。国内では改革の深化を徹底し、小康社会の全面的な建設を推進する一年となる。対外的には、中国共産党第十八次全国代表大会以降に確定された、海外事業に関する方針と提案を徐々に実行に移し、世界平和を主旨とする外交政策を積極的に進める一年となる。中国の経済力の成長に伴い、中国の国際舞台における政治・経済・文化など各分野の影響力が拡大を続ける。国内外の大局が相互補完・促進する。平和的発展の道を歩み続ける中国は、世界の平和・安定・発展に対して、より積極的な力を発揮する。(筆者:丁原洪 元外交部政策研究室主任、元駐EU中国大使)
「中国網日本語版(チャイナネット)」2016年1月6日