フィリピンが一方的に提起した南中国海の仲裁の結果がまもなく出るとの声の高まりにつれ、各勢力は集中的な活動を進め、仲裁裁判所の最終裁決を利用して中国を脅迫しようとの野心を露わにしている。(文:蘇暁暉・中国国際問題研究院国際戦略研究所副所長)
米国メディアは、フィリピンの仲裁発動の準備段階からすでに、待ちきれないとばかり宣伝を繰り広げてきた。フィリピンが始めた仲裁の「ドタバタ劇」は、国際法を実践する高尚な行動と美化された。仲裁に参加せずこれを受け入れないという中国の正しい選択は、国際ルールに違反するものと悪意によって決めつけられた。米国の高官は繰り返しフィリピンの味方をし、仲裁の影響力を拡大し、その「権威性」を高めようとしている。
米国とフィリピンが長期にわたって用意してきたあからさまなこの企みの意図は、仲裁を利用して様々な効果を実現することにある。
第一に、中国の南中国海における領土主権と海洋権益を否定する。フィリピンが提起した仲裁内容は、「国連海洋法条約」第298条の関連規定に基づいて中国が行った除外声明を巧妙に回避している。だが事情を知っている人には、フィリピンが「海洋法条約」を不当に利用して中国の南中国海における歴史的な権益を攻撃することは「海洋法条約」の意図に反するものであることは明白である。だが米国は正誤を顧みることなく、「法廷外仲裁員」の役割を演じることに躍起になっている。「司馬昭之心,路人皆知」(司馬昭の野心は道行く人でも知っている)とはこのことである。
第二に、今回の仲裁の効果を拡大し、モデルとしての効果を生む。米国とフィリピンは、南中国海で中国に挑戦する新たな試みとしてこの仲裁を捉えている。西側の多くのメディアはすでに、南中国海の周辺国家がこのやり方にならい、中国に対して仲裁を提起することを奨励している。米国は現在、仲裁後の行動を準備している。結果が公表されれば、米国が西側世論を導いて中国に対する圧力を強めることになる可能性は高い。中国が今後、南中国海で展開する主権範囲内の合理的な活動にはすべて、「仲裁への反抗」というレッテルが貼られることになる。
第三に、地域の同盟関係を強化する。米国とフィリピンは、「中国の脅威に共同で対応する」という名の下に軍事協力を強化し、それぞれの目的を達成しようとしている。米国は、地域の同盟国との関係をより近付け、先進的な軍艦や軍用機をアジア太平洋地域により多く配備し、「アジア太平洋へのリバランス」戦略を全面的に進め、その利益と地域における「主導権」を高め、中国の封鎖と中国の発展の牽制に正義の衣をまとわせようとしている。
フィリピンと米国の始めた仲裁のドタバタ劇に対し、中国は冷静に対応し、相手の出方に応じた手を繰り出し、そのあくどい意図を暴露し、卑怯な企てを粉砕することができる。