豪州国内では最近、中国の影響力をめぐる議論が沸騰している。「中国脅威論」の論調が再燃し、その激しさと範囲は、中豪関係が大きな波乱に見舞われた2009年にも匹敵している。(文:郭春梅・中国現代国際関係研究院南太平洋研究室執行主任)
盛り上がる「中国脅威論」
今回の「中国脅威論」の論調には、中国政府や中国企業、さらには華人が豪州の政治家を買収して代弁者にしているとする「政治的脅威論」、豪州国内の華人や中文メディアが同国でなく中国政府に忠誠を尽くしているとする「社会的脅威論」、さらに中国の投資が豪州の「国家安全」を脅かしているとする「経済的脅威論」がある。
豪州の一部の主流メディアと保守政治家からの攻撃を受け、中国とかかわりのあるあらゆる企業や個人が「売国」の疑いの的となった。一部の政治家は中国との関係について釈明を迫られた。中豪友好に尽くしてきたシンクタンクはその「中立性」を証明せねばならなくなった。華人は豪州への忠誠心を示すことを余儀なくされた。こうした敏感な背景の下、豪政府は「国家安全」を理由に、電力公社オースグリッドへの中国国家電網と長江基建の投資を却下した。同公社は結局、豪州の現地企業2社が99年のリース契約を結ぶこととなった。また中国企業が何度も投資を打診しながら却下されていた豪キッドマン社の農場についても最近、豪企業4社による高価格での競争入札が進行中との情報が伝えられている。豪政府は、民意を配慮して中国と距離を置こうとしていると言われても仕方がない。