米国の主導する「環太平洋戦略的経済連携協定」(TPP)はこのほど、オバマ政権から後継者のトランプ氏へと正式に引き継がれた。TPP交渉の座礁が間近であることを意味する。この措置を受け、協定関連国は代替案の検討を始め、その他の自由貿易圈に加盟するか、米国を除外した状況下で自らの自由貿易圈の発足を継続するかなどを迫られている。
米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』の報道によると、オバマ政権はもともと、民主党大統領候補のヒラリー・クリントン氏が大統領に選出されれば、選挙終了後、共和党上層部と協力して議会でのTPP批准を推進する予定だった。だがトランプ氏の選挙戦勝利と共和党上層部が表明した新たな態度から考慮し、オバマ政権は、TPPの発効を断念せざるを得なくなった。報道によると、TPPが議会の承認を得られなかったことは、オバマ大統領にとっては「無残な失敗」であり、米国のアジア太平洋地域における信用と影響力を弱めることともなる。
この報道はさらに、自由貿易に対するオバマ大統領の遅ればせながらも熱心なサポートは、民主党内の意見の食い違いを拡大し、ヒラリーの選挙戦にマイナス影響を与えたとも伝えた。
ここ数カ月、米国通商代表部(USTR)は、米議会議員に対してTPPを採択するよう説得を続けて来た。だが共和党大統領候補のトランプ氏が意外にも大統領選で勝利を獲得し、共和党も議会で多数派を維持ししたため、この努力は頓挫する可能性がある。ロイター社は、米国通商代表部報道官のMatthew McAlvanah氏の次のような声明を伝えている。「我々はこれまでに議会と緊密に協力し、未解决の問題の解決をはかり、すでに進展を実現している。しかしこれは立法プロセスであり、さらなる推進の是非と時期は議会のリーダーが決定する」
5年余りの交渉を経て、米国や日本、オーストラリア、カナダ、メキシコ、ベトナム、マレーシアなど12カ国は昨年10月、TPP交渉で合意を達成し、今年2月には協定文書に正式に署名している。だが協定の発効にはさらに、各国の立法機関での批准を得る必要がある。