次期米大統領に選出されたドナルド・トランプ氏は21日のビデオメッセージで、就任初日に環太平洋経済連携協定(TPP)から離脱する意向を伝えると述べた。一部の東南アジア諸国は、この情報に複雑な感情を抱いている。
東南アジアのシンガポール、マレーシア、ベトナム、ブルネイと、米国、日本、豪州などの環太平洋8カ国が1年前に閣僚会合を終え、TPP協定を大筋合意した。東南アジア諸国では当時、これに喜び、憧れ、焦り、考える人がいた。ところがわずか1年後、このような気持ちは不満、憤怒、喜び、反省、別の道の打開に変わった。
米大統領選が大々的に展開された先月末、シンガポールのリー・シェンロン首相は米国メディアの口を借り、警告に似た言葉を伝えていた。「あなたたち(米国)はベトナムをTPPに引きずり込み、日本をTPPに引きずり込んだ……にも関わらず、今や離脱すると言っている……これは米国の失敗だ」トランプ氏が当選すると、リー・シェンロン首相は激しい発言を抑え、やるせなさ、さらには悲しみを示すようになった。
ベトナムは数年に渡る「TPPブーム」を冷却中だ。ベトナムのグエン・スアン・フック首相は今月17日、本国会でTPPを審議することはないと明言した。その条件が現時点では整っていないことが原因だ。ベトナム通信社は同日、エコノミストの観点を引用し、「ベトナム経済がTPP中止により深刻な影響を受けることはない」と報じた。それまで一部の西側の政治家・エコノミストは、ベトナムがTPPの最大の受益者になると宣伝していた。
タイ、インドネシアなど、TPPに参加していなかったが参加を目指していた東南アジア諸国は、現状に感嘆を漏らし、参加しなくて良かったと喜んでいる。タイは2012年よりTPP参加を模索し始めた。近年はさらに日本という「仲介者」がタイに約束・保証を繰り返した。ところが今や状況が逆転し、タイはその他の地域貿易枠組みによる進展を目指すようになった。
多くの東南アジア諸国が近年、TPPという「米国のルール、米国の基準」を中心とする概念に興奮し、美しいビジョンを描いていた。米国が自ら「絵に描いた餅」を破り捨てると、一部の人はこの「米国本位」の設計案を反省し始めた。
シンガポール南洋理工大学S・ラジャラトナム国際研究学部上席研究員の胡逸山氏は、新華社のインタビューに応じた際に、「TPPの運命は大統領選挙前に決まっていた。しかし人々は当時、ヒラリー氏が勝利すれば、同じく民主党のオバマ大統領が任期内に、国会でのTPP承認を推進すると期待していた。トランプ氏が大統領選に勝利したことで、この希望が失われた」と指摘した。
一部の東南アジア諸国は、TPPがオバマ政権の「アジア太平洋リバランス」戦略の経済の駒であり、計画当初より純粋な貿易協定ではなかったことをよく理解している。タイ英字紙『The Nation』は先月末、「TPPの失敗は、これが政治の既得権益者に利する協定であり、参加国の国民に資するものではない点にある。この現在も公開が認められないほど秘密にされている協定は、西側大国の貿易会社や既得権益者の特権の化身であり、その他の参加国の貿易が彼らの意に沿わなければ、事前に設定しておいた法律を使用することだろう。真の貿易協定はすべての国の相互尊重、経済の持続可能な発展に基づかなければならない」と論じた。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2016年11月24日