伊藤洋平 NPO法人東京都日中友好協会副理事長
日中関係が改善の兆しを見せているが、なぜ中国に旅行へ行く日本人が増えないのか。それは、多くの日本人にとって、中国はいまだに大気汚染が深刻であるというイメージが強いことが要因の一つであると考える。
身近なところでいうと、私が事務局を務める公益社団法人日中友好協会中国留学友の会は、毎年中国政府奨学金を受けて中国へ留学する人たちのOB・OG組織であるが、近年は留学先として北京以外の都市を選ぶ人が多くなっている。それは、日本で北京の大気汚染の問題が大きく取り上げられているせいで、北京は大気汚染イメージが強いという意識が見え隠れしている。
今回の報告では、中国国内で環境問題に取り組む姿勢とその成果が述べられている。特に、重点都市の重度大気汚染日の半減、森林面積の増加と砂漠地域の減少というのは日本人にとってこれまでの中国に対するイメージを大きく変えるものになるのではなかろうか。
これまで、世界の工場として、環境よりも生産に力を入れてきたイメージの強い中国。日本もかつては同じ道をたどり、欧米の環境意識の高さに大きな刺激を受けながら、省エネなど環境技術だけでなく、市民レベルまでの高い環境意識が醸成されてきた。中国もおそらくこのまま技術を高め、また一方で市民の環境意識がさらに高まり、将来的には環境先進国として世界的に認識される国になるのだと思う。
近年、日本では国連サミットで採択されたSDGs(Sustainable Development Goals)という指標を意識した取り組みが進められている。これは環境分野も含めた世界の発展目標を定めたもので、国連で定めたことであることから、もちろんすでに中国でも意識されている事柄でもある。今後、これが日中間の一つの共通言語となることで、お互いが同じ方向性を目指し、経済だけでなく、環境や高齢化といった社会問題についてもさらに連携体制を強化して取り組みが進むことを期待したい。
人民中国インターネット版