トランプ米大統領は20日、ロシアが長期的にINF(中距離核戦力)全廃条約に違反していると批判し、米国は同条約から脱退すると発言した。
これにはトランプ氏がロシアの条約違反に不満という「公式理由」の他に、自身の縛りを緩め核兵器の強化を続けるための障害を取り払うという、重要な目的があると分析されている。
盤古智庫の梁亜浜上席研究員は、米国の同条約からの脱退には主に次の2つの原因があると判断した。まず同条約は米ロのみを制限し、その他の大国が加わっていない。次に米政府は、現代は大国が競争・駆け引きを展開する時代だが、中距離ミサイルはその重要な武器になると考えている。「トランプ政権は発足後、戦略核兵器を戦術核兵器に転じ、武器の小型化とスマート化に取り組む意向を示している。INF条約からの脱退は、核兵器の戦術化に関する具体的な動きだ」
トランプ政権の核兵器強化の意図は、年初の段階でうかがい知ることができた。米国防総省は2月に発表した「核態勢見直し(NPR)」の中で、米国はより多くの種類の核兵器を開発し、核攻撃の手段を豊富にし抑止力を強化し、核能力の「無敵」を保証すべきとした。NPRが発表されると、国際社会で広く懸念された。
米メディアは「米国はこれまでINF条約から脱退していなかった。これはドイツを中心とする欧州の同盟国による反対よりも、脱退すれば世界範囲の新たな核軍備競争が生じる可能性があると、これまでの米政府が懸念していたからだ」と論じた。
深刻な影響も
トランプ政権発足後、ロシアの大統領選への介入に関する調査、米国のロシアに対する数多くの制裁及び外交係争などにより、米露関係は常に低空飛行している。アナリストは「INF条約は米ソ間で戦略的バランスを実現するため形成されたものだ。米国が現在、一方的に同条約から脱退しようとしていることで、米露の対立をさらに深めることは間違いない」と指摘した。
また多くの専門家は、米国の脱退は国際核軍縮事業を著しく損ね、核軍備競争を引き起こし、世界各国の安全を脅かすと判断した。
米国の核兵器専門家は「米国のINF条約からの脱退は、長期的に維持されてきた核安定の局面をかき乱し、米ロが今後再び軍縮協定に署名することをより困難にする」と指摘した。
米国科学者連盟核情報研究プロジェクト長のハンス・クリステンセン氏は「INF条約が紙切れになれば、欧州などで新たなミサイル開発のブームが生じる可能性がある。各国はミサイルとミサイル防衛システムに、多くのマンパワーと資金を投入するようになるだろう」と予想した。
梁氏は「米国がINF条約から脱退すると、中距離ミサイルを欧州とアジア太平洋に配備する可能性が高い。米国の前線配備能力が大幅に強化される。これは大国間の軍備競争及び地政学的駆け引きが激化することを意味し、世界の安全構造の安定も損なわれる。また将来的に中距離ミサイルを配備される米国の同盟国も、より大きな安全のリスクにさらされる。これは彼らが先に攻撃される対象になりうるからだ」と分析した。
ロシアのプシコフ上院議員は「米国のINF条約からの脱退は、ABM条約脱退に続く、世界の戦略的安定体制に対する2度目の打撃だ。米国は世界を再び冷戦に戻らせる」と述べた。
米ミドルベリー国際大学院モントレー校の核兵器アナリストは「米国のINF条約からの脱退は間違った決定だ。米国はこれによって何も(メリットも)得られない」と話した。
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2018年10月22日