資本主義国の政治制度に慣れ親しんでいる日本人は、「党の指導の強化」という言葉にはマイナスのイメージを抱きがちである。だが、「党の指導の強化」は、人々の切実な利益に関わる政策を、スピード感をもって打ち出せるという利点がある。例えば、重大事故や災害時の対応は、中国の方が迅速だ。指導者が指示を出せば、関連部門はいち早く救助活動を始めることができる。それに対し、議会制民主主義のもとでは、決定が遅く、緊急事態の発生時にうまく対応できないことがある。そのため、日本の一部の論者の言う、中国を「民主化」すれば、中国の人々が幸せになるという説は中国の政治体制の優位性を無視したものである。
「人民を中心とする」思想も社会主義の大きな優位性だ。資本主義国の議会制民主主義のもとでは、政治家は基本的に選挙に勝つことを考えなければならないので、打ち出す政策は支持基盤となる層の利益を考慮したものとなる。それに対し、共産党はすべての人々、特に社会的弱者の利益に配慮する考えがある。現在、中国は「人民を中心とする」思想を基礎において政策を打ち出している。過去2年の全人代の「政府活動報告」を見ると、小中学生の負担軽減や観光地の入場料の引き下げなど人々の暮らしに密接に関わる問題を取り上げており、低所得の労働者、競争に敗れた人々、貧困層を救うという社会主義本来の理想を具現化させている。
規律を正してガバナンス能力をさらに高める中国共産党の強い決意
かつては国際情勢の関係から、人々が触れることのできる情報が限られていたが、今はインターネットの発展により、人々の情報量が格段に増え、多様化した社会になっている。この状況のもとでは、中国共産党は人々が改革の成果を目に見えるようにする必要がある。そのためには、党の指導は重要な役割を果たす。政権党の強力な指導は、中国だけに見られることではない。アジア諸国も工業化の中で国が重要な役割を果たし、それが「アジアの奇跡」といわれる目覚しい経済成長につながった。中国の改革開放も中国共産党の強力なリーダーシップのもとで行われ、急速な経済成長につながった。
現在、中国は「新たな改革開放」に入っており、それをスムーズに進めるためにも党が指導力を発揮することは重要だ。そのため、習近平国家主席は党の体質改善を進めてきたのである。今回の四中全会の決定でも、党の体質改善に資する措置が打ち出されており、改革のレールを敷く役割を担う存在として、中国共産党の政権担当能力をさらに向上させる強い決意が感じられる。
また、四中全会の決定には、全人代の監督についても言及されている。中国共産党は自党の指導力強化について述べるとともに、権力への監督についても述べている。第18期三中全会でも、全人代改革について言及しており、全人代の監督機能強化に向けての改革が進みそうだ。
現在、日中関係は「正常な軌道」に戻っており、来年春の習近平国家主席の訪日でさらに両国関係の発展に弾みがつくだろう。中国は共産党が長期的に政権を担当しているため、長期的に国の戦略を練ることができる。
日本はこれまで政権が頻繁に変わったが、この7年間は長期政権となっており、長いスパンで対中政策に向き合うことができている。ただ、日本国内には中国に対し偏った見方もあるため、日中関係の改善は「持久戦」の構えでのぞむ必要がある。中国のさらなる改革の成功で、日本国内の人々の中国に対する見方も変わってくるのではないかと思う。
(吉田陽介 フリーライター)
「北京週報日本語版」2019年12月27日