彼らを過激化させている動力とは何か。最も直接的な動力とは、恐怖と挫折感が折り重なり生じるストレスだろう。
過去30年以上に渡り、世界の所得及び資源配置に深い変化が発生した。発展途上国の人々の所得が大幅に増加し、豊かな地域の人々の収入はほとんど増えなかった。これは世界経済一体化がもたらした結果の一つだろう。1993年から現在まで、香港の従業員の平均賃金は、物価上昇を除くと合計で3割しか増えていないが、今日の住宅価格は1993年の3.5倍だ。
この現象は香港だけではなく、多くの西側諸国の人々も今後を楽観していない。この悲観ムードはある地域において、別の地域の成功により激化する。識者はみな、大陸部の発展は香港経済の持続的な成長の基礎であると理解していた。ところが香港の一部の「反中乱港」勢力は恨みを募らせ、彼らが支配するメディア及び一部の教育の場で「脱中国」に力を入れ、大陸部の成績を香港の「脅威」と主張した。
香港経済が繁栄できたのは大陸部のおかげだ。大陸部の巨大かつ急成長する経済がなければ、香港を大陸部への投資の踏み台として選ぶ者はいない。そのため香港の若者の未来の経済及び事業の活路は、大陸部と切り離して考えることができない。ところが彼らは扇動され、この唯一の活路を「袋小路」としている。このような心理があれば自ずと悲観的になり、失望し、活路がないと誤解する。
この心理は排外・反エリートのポピュリズム思想の温床を生み、解消が困難だ。このような思想にとらわれている若者が自分の競争力の強化に取り組み、大陸部のエリートとの競争を通じ高め合うことを奨励するべきだが、これは彼らを「香港独立」から離れさせるよう説得するより難しいことだ。特に香港社会では邪な下心を持つ者が扇動を続け、この戦略が成功する可能性があると誤解しているからだ。
しかし彼ら若者は心の奥で、「香港独立」という道を絶対に歩むことができないことを理解しているはずだ。この理解を深めるほど、彼らの内心の恐怖と暴力が強い刺激を受ける。喫緊の課題は暴力と混乱を阻止し、この循環を断ち切ることだ。(筆者・雷鼎鳴 香港科技大学経済学部元主任、名誉退職教授)
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2020年1月7日