新型コロナウイルス肺炎の感染拡大が世界的な戦いであるとするならば、英国政府が最近掲げた「集団免疫」という方針は、各国の医学専門家から「ウイルスに直接白旗を掲げた」と見なされた。しかし「このやり方は過去に奏功した」と擁護する声もある。集団免疫とはどのような医学の概念なのだろうか、今回の新型コロナウイルスと「マッチ」するのだろうか。「環球時報」が伝えた。
最初に集団免疫の理論を掲げたのは、英国政府首席科学顧問のパトリック・バランス氏だ。パトリック氏は13日、英スカイニュースのインタビューに応じた際に、「英国人の約60%が新型コロナウイルスに感染し、社会が未来の感染に対して集団免疫をつける」と述べた。パトリック氏の予測によると、英国の現在の人口が約6600万人であることから、4000万人が新型コロナウイルスに感染する計算になる。
集団免疫の概念は、感染症の予防・抑制で広く用いられている。オックスフォード大学の報告によると、集団免疫は感染性を持つ疾病のみに適用される。集団免疫を形成する上で重要になるのは、十分に多くの人が免疫力をつけることだ。
ところがオックスフォード大学は、大多数の人がワクチン接種を受けなければ効果を発揮しないと強調した。例えば20人中19人が麻疹ワクチンの接種を受ければ、接種を受けていない人を保護することができる。人々がワクチン接種を受けなければ、集団免疫は効果を失う。国連は2000年に米国から麻疹が消えたと発表したが、2019年に全米で流行した。これは接種を受ける人が減り、集団免疫の効果が失われたためだ。
首都医科大学の饒毅校長は14日に発表した文章の中で、集団免疫は完全に英国首相による「嘘」との観点を示した。饒氏によると、一部の人がワクチン接種を拒んだが、大多数の人が接種を受け免疫力をつけ、さらにウイルスが接種を受けていない人を見つけられなかった場合に感染が途絶え、「集団免疫現象」が生じる。ところが新型ウイルスが発生し、ワクチンが存在せず、先天的な免疫力を持つ人がごく一部であれば、ウイルス拡散を防止せず全国民をウイルスにさらしても集団免疫が生じることはない。少数の初めから抵抗力を持っている人だけでは、ワクチン接種により免疫力をつけた多くの人のようにウイルス拡散を防止することはできない。饒氏は、この措置は人類の基本的な医療の進歩を完全に否定していると批判した。「それならば我々はすべてのワクチンの努力を放棄すべきなのだろうか」
饒氏は、新型コロナウイルスの感染では無症状者及び多くの軽症者がいるが、そのいずれも他者にウイルスをうつすことが証明されており、「天然の障壁」を形成していないと指摘した。
中国疾病予防管理センターが発表したデータによると、新型コロナウイルス肺炎の軽症者が占める割合は約8割にのぼるが、北京湖北省支援医療チームの専門家は環球時報の記者に次のように話した。新型コロナウイルスは容態の変化が速いが、軽症者が直ちに治療を受けられなければ重症率・死亡率が大幅に上昇する。中国の新型肺炎の死亡率は現在3.9%でインフルエンザを大きく上回る。英国が強制的な隔離措置を講じず感染を放任すれば、3.9%よりも高い死亡率になる恐れがある。
香港大学微生物学科講座教授の袁国勇氏は15日、集団免疫は通常、疾病の死亡率が非常に低い場合に使用されるが、今回の死亡率は1−3%であるため、多くの高齢者もしくは慢性疾患の患者は感染後に入院しなければならないと指摘した。救急室、病室、ICUもパンクし、医療崩壊が生じうる。またこれは医師及び看護師の感染や死につながり、大きな恐慌を生む可能性がある。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2020年3月16日