新型コロナウイルスの感染が欧米で拡大するなか、その重大性はすでに一部の国の戦略的方針を決定する能力を上回っている。中国人の感染対策における努力と犠牲を考えると、西側が中国の当時の感染ピークより非常に深刻な状況になるとは想像しがたいが、事実はその通りになっている。(筆者 ジョン・ロス 英ロンドン経済・ビジネス政策署元署長、中国人民大学重陽金融研究院研究員)
武漢市が先ほど新型コロナウイルスの感染による死者数を35%上方修正したため、感染ピーク時の中国の死者は1日最多254人にのぼった。米国のこの数値は現在2395人にのぼっている。中国の人口が米国の4倍以上であることから、米国の1日あたりの死者のピーク値が全人口に占める割合は、中国の40倍という計算になる。
英国の1日あたりの死者のピーク値は現在980人となっている。中国の人口が英国の21倍であることから、中国の111倍という計算だ。
累計の死者数も同じく衝撃的だ。本記事執筆時、中国の新型コロナウイルス感染症による死者は4642人、英国は1万5464人、米国は3万2427人。中国と同じ人口の場合、英国は32万3000人、米国は13万8000人にのぼっていたはずだ。米国の死者は中国の30倍の計算で、さらに増加を続けている。
死亡率の政治情勢への悪影響は、米国でさらに深刻化する。米軍は第二次大戦、朝鮮戦争、ベトナム戦争で多くの死傷者を出したが、本土で一般人の大規模な死者が発生したのは南北戦争、1918年のスペインかぜの2回のみだ。
米国のこの災いに対する反応は明白だ。政府は自国民をパンデミックの危害から効果的に守ることができなかった。この事実に関する真相が明らかになれば米国の国の価値観、国際的な名声に大きなダメージが生じる。そのため国民への隠蔽は極めて重要だ。ホワイトハウスが毎日の記者会見で嘘をついていることは周知の通りだ。同じように民主党の立候補者による選挙運動にも歪みが生じている。その宣伝は、トランプ大統領が米国の感染対策の準備を徹底できなかったことよりも、トランプ氏が中国に「投降」したことへの批判に重きを置いている。
一部の国では、世論にすでに大きな変化が生じている。例えば先ほどイタリア人を対象に行われた世論調査によると、「将来的にどの国と連携を強化すべきか」という設問について、「中国」は36%にのぼり、「米国」は30%だった。
一部の国で激しい戦いが展開されているが、その結果はまだ出ていない。例えば英政府は年初、米国からの圧力に耐え、5Gネットワーク建設へのファーウェイの参与を認めた。しかし米国の一部が感染対策の壊滅的な失敗の責任を転嫁しようとしているのと同様、英国のラーブ外相は先ほど感染症の問題をめぐり中国を批判し、中英関係は「すべてが昔のままというわけにはいかない」と述べた。英国の「親米派」もファーウェイに関する決定を覆そうと新たに働きかけている。
その一方で、英国のその他の政治勢力は中国に援助を求めている。4月2−15日にかけて、中国から英国に1200万点の医療防護用品が送られた。英国衛生業界の代表者、例えば有名な医学誌『ランセット』は中国の感染対策の取り組みを支持して憚らない。
感染症の危機が最終的な結末を迎えるまで、その中英関係への最終的な影響を判断することはできない。英政府は現在、感染対策に専念しており、外交戦略・政策を真剣に検討する可能性は低い。力を持つ親米勢力は、米国の政策により忠実に追従するよう英国に働きかけようとしている。例えばファーウェイの5G建設への参与の決定を覆そうとしているが、これは英国の経済的な利益を損ねる。さらに規制措置を早めに解除しようとしているが、これは公衆衛生の災難を引き起こす。米国の一部勢力は反中運動を起こそうと試みているが、その他の大多数の国は参加を拒否している。英国が完全に賛同するかは感染状況、及び英国民の理性的な経済の計算によって決まる。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2020年4月23日