マレーシアのクアラルンプール国際空港で、中国政府が派遣した新型肺炎の医療専門家チームと共にマレーシアへ送られた支援物資を運搬する地上スタッフ(写真=新華社提供)
世界で新型コロナウイルスによる肺炎の感染状況がなお悪化しているが、新型肺炎の第一波となる被害を受けたのは東アジアの国々だ。中国は初期段階で厳格な予防・コントロール措置を取り、経済・社会活動を一時ストップさせた。同時に、東アジア各国間での人的往来は急減し、物流も大幅に滞り、世界三大エコノミーの一つである東アジアの社会・経済は大きなダメージを受けた。注意すべきなのは、この期間にアメリカ人はおしなべて他人事と感じ、アメリカの政治家や高官は産業がアメリカに戻ってくる上で新型肺炎が「プラスとなる」とすら言ったことだ。
このような状況下で想起するのは、1997年の東アジア金融危機が地域経済全体にもたらした巨大なダメージの惨状だ。当時、アメリカのヘッジファンドなどによる空売りでタイの金融は崩壊の危機に瀕し、フィリピン、インドネシア、マレーシア、シンガポールの金融市場は重大な損失を被り、各国が受けたダメージは戦争にも劣らないもので、さらに中国の香港・台湾地区、そして韓国も深刻なダメージを負った。当時の中国は巨大な金融リスクの圧力に耐え、人民元の切り下げを行わないことを堅持し、東南アジアの一部の国に金融援助を行い、遂には東アジアの金融市場を安定させた。
1997年の金融危機は東アジアの国々に、栄光も恥辱も共に分かち合うことが地域全体にとって極めて重要であり、協力し互いに助け合う必要があると認識させた。そのため、まさにその年に東アジア各国は初めて手を携え、「東南アジア諸国連合(ASEAN)プラス中日韓」(10+3)という東アジア地域の多国間協力メカニズムを打ち立て、地域の制度的な経済協調を共同推進してきた。
東アジアの国々は歴史と現実の経験の中から、自己の利益のみを追求する世界の超大国が真に東アジアのためを思うことはありえず、域外の勢力は肝心な時に決して頼りにならないという示唆を得てきた。このことに鑑みて、東アジアの国々が新型肺炎と戦い、経済の回復を推し進め、発展を促すためには、東アジア諸国の団結と心を一つにした協力だけが拠りどころとなる。新型肺炎の感染拡大がもたらす内在的試練とアメリカによる冷淡な隔絶が引き起こす外部圧力に直面して、東アジアの国々は新たな未来に向かって手を携えて共に進み、地域協力に新たな原動力を加え、地域統合における制度化された協力レベルを高める必要がある。
4月14日に開催された新型コロナウイルスへの対応策を協議するASEANと中日韓の首脳による特別会議は、東アジア各国がこの危機をチャンスに変え、協力を強化する重要な多国間行動だ。この度の東アジア首脳会議は、世界で最初の地域的な新型肺炎への対応であり、経済の回復を推し進める多国間の集団行動と言うべきだ。
この会議で、各国首脳は新型肺炎に共同で対応する極めて強い意志と集団行動の具体的な提案を強調しただけではなく、より重要なのは各国が地域内の社会・経済の活力を回復させるために手を携えて努力をする意志を示したことだ。中国はこの度の特別会議で「重要かつ緊急的な人的往来のための『ファストレーン』の開設」「さらなる関税の引き下げ、障壁の撤去、貿易の円滑化、投資の促進」「ASEANによる新型コロナウイルス対策基金設立への支持」「10+3緊急医療物資備蓄センターの設立」などを提議し、多くの国の首脳の支持と賛同を得た。
とりわけ重視すべきは、本会議の最後に発表された「特別会議共同声明」だ。過去23年間で「10+3」首脳会議は3回しか「共同声明」を発表しておらず、いずれも重要な時期に今後の東アジアにおける協力の戦略的方向性を定めるために出された重要な文書だ。このことから、東アジア各国の新型肺炎への共同対応と経済の回復のために発表された今回の共同声明は、非常に重要な意義を持つことが分かる。共同声明からは、会議に参加した各国が共同で有効な新型肺炎の予防・コントロールに着目しているのみならず、今後の地域経済協力の方向性を定めていることも見て取れる。
新型肺炎の被害と経済の回復という共同の試練に直面して、危機をチャンスに変えて東アジア協力をアップグレードする新たな機会に転化させる必要がある。各国の実務協力を通じ、物資供給のメカニズム構築を推し進め、金融産業の制度上の協力を実現し、ひいては生命が相連なり運命を共にする地域共同体を打ち立てる。
(蘇浩 外交学院戦略・平和研究センター主任)
「北京週報日本語版」2020年4月23日