中国の経済成長目標は毎年の全国両会(全国人民代表大会と中国人民政治協商会議)で最も注目を集める話題の一つ。延期開催となった今回は特に、国内総生産(GDP)成長率目標を見送るのではないかなど様々な議論が繰り広げられている。
見送りを支持する人の意見は、コロナ流行で経済情勢が不透明な中、具体目標を設定すれば「副作用」が生じる可能性があるというもの。中国人民銀行(中央銀行)貨幣政策委員会の馬駿委員は、成長目標が高過ぎるとマクロ政策が足かせとなり「洪水が流れ込む」可能性があると懸念を示す。そのため経済政策の主要目標を雇用安定と失業後の社会保障に転換するべきだという。
成長目標保留に賛同する人の意見は、中国経済は操業再開・生産再開の重要な時期にあり、合理的な目標設定が安定した見通しに有利だというもの。中国社会科学院世界経済・政治研究所国際投資研究室の張明主任は、雇用安定と経済成長は関係性があるため、今年も柔軟性の高い成長目標を設定し、資源配分の調整を行うべきだという見方を示す。
表面的にはこの2つの観点は真っ向から対立しているようだが、実は共通部分もかなりある。
中国経済が速度から質に切り替えている今、成長目標は実のところ人目を惹く数字ではなく、より実際に即し、より国民生活に恩恵を与え、より有効に成長をリードするかということに焦点が向けられている。そこにこそまさに中国政府が経済成長の枠組みを構築した際に準拠した重要な規範がある。
実際のところ従来の指令的な目標ではなく、今回中国が公式設定した経済成長指標の多くは予測の役割を果たしている。過去数年の政府活動報告を振り返ると、「数字のプレッシャー」を抱えるのではなく、今後1年間の成長経路や潜在力を展望するため、GDP成長率の目標の多くは柔軟性のある表現などが使われている。