台頭する中国にどう対応すべきか。これは米国の新政権が直面する大きな問題だ。多くの米国人は、ある種の抑制は実現可能と考えているが、これは本当に可能だろうか。筆者はそう考えない。英紙「フィナンシャル・タイムズ」が伝えた。
匿名の元米政府高官による文書「新たな米国の対中戦略を見据えて」は、世界の主導権を握ろうとする中国の脅威に対応するため、米国は一連の重要な利益を守らなければならないとした。これには、米国の全体的な経済・技術の優位性の維持、米ドルの世界的な地位の保護、圧倒的な軍事抑止力の維持、同盟・パートナーシップの強化などが含まれる。しかしそれと同時に、共同の世界の脅威、特に気候変動に対応しなければならない。これらの目標は実現できるだろうか。筆者はそう考えない。
まず、中国はソ連よりもはるかに手強いライバルだ。より成功した経済、より活力あふれるテック産業、より多くの人口、より団結力のある政体、より能力のある政府を持つ。より重要なのは中国の潜在力だ。中国の現在の1人あたりGDP(購買力平価換算)は米国の3分の1(2000年は8%)、EUの半分だ。2050年にこの数値が米国の半分に上がれば、中国の経済規模は米国とEUの合計に相当することになる。
次に、中国経済が高度に世界に溶け込む。これは脆弱性を生じさせるが、中国の影響力を拡大する。中国市場は世界の多くの国に対して魅力を持つ。シンガポールの学者である馬凱碩氏が強調するように、多くの国が米中との良好な関係を維持しようとしており、米国重視・中国軽視を望んでいない。
最後に過去20年、特に過去4年に渡り、米国は自国の理性、正直、信頼、さらには基本的な民主の準則に関する名誉を傷つけた。これは重要なことだ。この米中の競争において、盟友が極めて重要だからだ。米国は以前よく、中国を「責任ある利害関係者」にさせると言いふらしていたが、「一強時代」の傲慢、イラク戦争、金融危機、トランプ政権を経た米国は、責任ある利害関係者なのだろうか。
米中関係には多くの競争が生じるが、協力を掘り下げなければならない。価値観の争いにおいて、西側の自由と民主が依然としてより大きな魅力を備えている。彼らが直面している真の挑戦は中国ではなく、国内におけるこれらの価値の回復だ。(筆者はフィナンシャル・タイムズの主席経済評論家であるマーティン・ウルフ氏)
「中国網日本語版(チャイナネット)」2021年2月4日