文=唐麗霞 中国農業大学人文・発展学院教授
新型コロナウイルス、気候変動、自然災害の多発といった各種要素を受け、世界の食糧安全問題が近年、深刻化している。ロシアとウクライナの衝突が長引くにつれ、さらに相乗効果が発生し、世界の食料安全リスクが拡大した。これにより世界の飢餓人口が増加するという結果がもたらされうる。飢餓をゼロにというSDGs目標の達成がより厳しくなる。世界各国が心を一つにして協力し、共に対応する必要がある。
ロシアとウクライナの衝突が世界の食糧安全に及ぼす影響は現在、主に次の4つとなっている。
(一)ロシアとウクライナは世界の重要な食糧生産大国及び輸出大国で、双方の衝突は世界の食糧市場の供給に影響を及ぼす。国連食糧農業機関(FAO)の関連データによると、両国は世界の最も重要な小麦・大麦・ヒマワリ種子の生産国で、両国で世界の生産量の14.56%・18.2%・52.6%を占めている。両国はまた世界の最も重要な食糧輸出国で、小麦・大麦・ヒマワリ種子の輸出量が世界に占める割合は32%・26%・65%にのぼる。両国はトウモロコシの主要生産国ではないが、その輸出は世界の17%を占めている。
(二)ロシアは世界の主なエネルギー供給国であり、双方の衝突により国際エネルギー価格が高騰し、農業生産の直接的なコストが拡大する。同時にエネルギーを主な原材料とする化学肥料や農薬などの農業用物資のコストも高騰する。またロシアは世界で最も主要な化学肥料生産国・輸出国だ。制裁及び国際的な物流の遅れなどを受け、世界の農業生産と今年の食糧生産量に影響が及ぶ可能性が高い。
(三)低所得国が食糧安全のより直接的な影響を受け、より急速に顕在化する。FAOの統計によると、食糧輸入にロシアとウクライナが占める割合が3割超の国は、世界の50カ国弱にのぼる。これらの国の大半が低所得国だ。小麦を例とすると、ロシアとウクライナからの輸入が5割超は26カ国で、7割超は11カ国にのぼり、特にアフリカ大陸に多い。
(四)ロシアとウクライナの衝突は、国際食糧援助体制に影響を及ぼす。双方の衝突は世界的な輸送費の高騰と食糧調達コストの高騰を引き起こし、国際食糧援助能力に影響を及ぼした。国連世界食糧計画(WFP)のビーズリー事務局長は今年2月、戦火の拡大が世界の食糧不足の問題を深刻化させており、世界の1億2500万人が食糧不足の危機に陥る恐れがあると警鐘を鳴らした。また双方の衝突により多くの難民が生じている。現在すでにウクライナの難民500万人が欧州諸国に逃れている。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2022年4月26日