日本政府はこのほど、今後の安全保障戦略と防衛政策の調整の指針となる新たな「国家安全保障戦略」「国家防衛戦略」「防衛力整備計画」を閣議決定した。これら3つの綱領的文書の概要から見て、日本の安保戦略は重大な転換を迎えようとしている。3文書の内容のうち、特に警戒に値する大きな変更として、以下が挙げられる。(文:劉一思<軍事科学院戦争研究院>。解放軍報掲載)
第1に、いわゆる「国全体の防衛体制」の構築と安全保障アプローチの根本的変更。「国家防衛戦略」は「国全体の防衛体制」を「外交力、情報力、経済力、技術力などを含めた国力を統合し、あらゆる政策手段を体系的に組み合わせて構築する」防衛体制と定義している。これは、「国家安全保障戦略」における経済・技術領域にまで拡大した安全保障概念と呼応している。実は両者は共に米国のいわゆる「全政府的アプローチ、全社会的アプローチ」に準拠しており、各方面のリソースの集中を図り、各級政府、民間機関、さらには個人の力を統合的に計画し、平時と戦時の境界を曖昧にするものであり、戦時動員を含む日本の安全保障の体制と能力を完全に転換する意図がある。
第2に、より強い作戦能力の構築と防衛力の根本的強化。日本はスタンド・オフ防衛能力、統合防空ミサイル防衛能力、無人アセット防衛能力など7大作戦能力の構築に力を注ごうとしている。このうち、スタンド・オフ防衛能力は「防衛」の名を冠しているものの、本質的には日本政府が長い間企ててきた「対敵基地攻撃能力」である。この能力を構築するため、「防衛力整備計画」で12式地対艦誘導弾の能力向上、高速滑空弾及び極超音速誘導弾の開発を明確に要求するとともに、潜水艦に搭載するスタンド・オフ・ミサイルの垂直発射システムを要求している。日本には、中長距離攻撃能力の保有を基礎に、大陸内陸部の戦略目標への攻撃効率を高める狙いがある。
第3に、外国との安全保障協力拡大と同盟システム内地位の根本的向上。日本の安保関連3文書は日米同盟の強化を安全保障・防衛政策を実行に移すうえでの重要なアプローチと捉えており、今後の日本の対外安保協力もこれを主軸に繰り広げられることになる。これに関連して取られる措置により、米国の同盟システムにおける「準枢軸」としての日本の地位はさらに揺るぎないものとなり、インド太平洋における同盟パートナー網が緊密なものになると見られる。
日本の安保戦略と防衛政策の変更は歴史の教訓と国際社会の現状を無視しており、第二次大戦後の国際秩序に対する公然たる挑戦であるとともに、日本の政客や党派の権力闘争、日米同盟の産物であり、日本の一般国民の利益や国家の長期的な前途・命運をしっかりと考慮してはいない。これらの変更は多くのブレイクスルーを実現するように見えるが、実際には冷戦思考を継続し、米国の中国抑止路線を踏襲するものだ。このような行為を改めないのならば、日本は武力を乱用し、近隣国を自国の困難のはけ口にする道を歩み出すことになるだろう。(編集NA)
「人民網日本語版」2022年12月27日