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専門家が語る金融危機
発信時間: 2008-11-10 | チャイナネット
(2)米国は公的資金注入の法制化を急げ
 ――今度の金融危機は90年代のバブル崩壊と酷似していると指摘した報道もありますが、両者は比較できますか? また、日本の銀行業は前回の金融危機でどのような教訓を汲み取ったのですか? それは今度の危機を乗り越えるための経験になるでしょうか。

 日本国内でも類似性が非常に高いという声もあります。資産価値の低下によって、信用を創造していたものが壊れてしまい、銀行の機能が停止してしまいました。米国政府は現在、悪化した銀行がもっている資産を買い取る仕組みだけを動かそうとしていますが、当時の日本も同じことをやったものの金融危機は止まらなかった。最終的に政府の公的資金を銀行そのものに注入することで、銀行の機能を安定化させたのです。高額の所得をもらって銀行に勤めている人が責任を取らないまま、政府の税金を積み込むことに対して、国民から納得感が得られず、全面的な対応が遅れた。そのため、日本経済の回復は結果的に時間がかかるようになってしまいました。

 アメリカの場合にひとつの教訓として、われわれが伝えなければならないとすれば、公的資金を銀行に注入する仕組みを法律として成立させるべきだということです。アメリカも時の日本と同様に多くの納税者からの納得感という問題をまだ解決できないでいます。ニューヨークの株がもう一段下がってみんなが大変だと感じ始めれば、(公的資金を銀行に注入する)その仕組みが起動し始まると思います。そこまでの準備が整わない現在は、銀行間のお金の融通がまったくできない状態で、経済そのものが麻痺した状態が続いています。それを解決するというのが差し当たった一番重要なステップではないかと思います。

 ――野村HDや三菱UFJフィナンシャルグループによる米国の金融大手の部門買収についてご意見をお聞かせください。日米の企業文化は融合しにくいと言われますが、それは企業の編成・運営に問題をもたらすのでしょうか。

 これだけ大規模な海外とのアライアンスというのは、日本の金融機関としては初めてです。MUFGはモルガン・スタンレーに20数パーセントの資本参加をします。一番難しいのは、モルガン・スタンレーの資産評価はどうやって適正に行うかということですね。

 野村證券がリーマンブラザーズのヨーロッパとアジアの人員を野村グループの中に取り込むということはM&Aとも少し違いますね。事業そのものを買ったのではなくて、人材を取り込むという形をしているのです。ヨーロッパとアジアのオペレーションを買っているので、国籍でいうとアメリカ人よりもたぶんヨーロッパとアジアの人が多いです。野村證券のヨーロッパオペレーションの職員は1000人ぐらいで、ヨーロッパのリーマンブラザーズの社員は2000数百人。今回の買収は以前より倍以上の人をいっきに組織の中に取り込むことですね。成功させるためには、文化的に融合するというより、オペレーションのイメージからすると、リーマンブラザーズのオペレーションそのものを上手に生かしていくことをやるのじゃないかと思います。

 ――日本の高度成長期にも日本企業が盛んに海外買収を行いました。当時の海外進出は成功しなかったですね。今度の買収と前回のそれと比較することができますか。有名なペブルビーチやロックフェラーの買収が失敗した原因はどこにあるとお考えですか。

 ペブルビーチやロックフェラーの買収が失敗したことについて、いろんな見方があると思いますけど、前は企業を買収したというよりも北米の資産を買ったところが大きく、買った時の価格が高すぎて、オペレーションのなかで利益がなかなか出し切れないという問題があった。今回やっているのは事業そのものです。資産より人を買うというまったく新しいスキームであり、特にリーマンブラザーズの人材を買うというアプローチは、日本でも非常に珍しいやり方です。そういう意味では難しいところはかなりあると思います。
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