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激変する経営環境--企業はどう動く 三井物産福島利宏氏
発信時間: 2008-12-10 | チャイナネット

さて、話題を変えますが、中国について私の思うところを4点程お話させて頂きたいと思います。

(1)その一番目は、やはり現在最大の関心事である世界的な金融危機と経済減速に対する中国政府の対応についてです。

昨年夏の米国のサブプライムローン問題の中国・日本への影響は当初は軽微で、今年の年初には中国政府は「景気過熱とインフレの防止」を主要政策とし、マクロコントロールの強化を行いました。その後、人民元高・賃金上昇・輸出減少などの影響で加工貿易型産業や体力のない中小企業の倒産・操業停止が目立ってきた為、中国政府は7月末には「安定的且つやや早い速度の経済発展の保持とインフレの抑制」と政策の微調整を行っています。

9月11日のリーマン・ブラザーズ破綻以降は、世界的な金融不安と急激な景気後退、及び中国の第3四半期(7--9月)のGDP成長率が前年同期比9%と3年振りに一桁台となったことに中国政府が危機感を持ち、立て続けに4回の利下げを実施すると共に、10月には経済政策を「比較的早い経済成長を保持する」とインフレ抑制に言及することなく景気対策強化にはっきりと舵を切っております。その決定打が11月9日に中国政府が発表した4兆元(約57兆円)に上る経済対策です。発表のタイミングの良さ、規模の大きさ、内需振興を軸とする10項目の具体策の適切さなど、嬉しい驚きでした。

中国政府のこれらの一連の政策対応を「迷走」と論評する向きも一部にはありますが、私は柔軟且つ適切な対応であると思っております。そんじょそこらの西側諸国より優れていると感じている次第です。

それにつけても思うことは、2001年末の中国のWTO加盟は中国経済の発展と高度化に大きく寄与しているなということです。WTO加盟以降中国は完全にグローバル経済の一員となり政府の政策手法も年々洗練されてきていると感じます。この背景には西側諸国で教育を受け、ビジネス経験も積んだエリート達が中国政府の要所要所におり、優秀なテクノクラートとして政策立案に活躍しているものと思われます。また政策決定権を持つ国の指導者層も経済や金融に関する高い理解力を持っておられると推察しています。例えば、私も一度単独でお会いした李克強副総理は法学学士であると共に経済学博士です。今後世界経済に於ける中国の存在が益々高まると思われる中、中国政府の対応力が洗練され高度化していくことは心強い限りです。

(2)二番目ですが、中国の農村改革についてです。

私は常々思っているのですが、過去5?6年の世界同時好況の最大の貢献者は中国、現在の世界同時不況を克服するに当っても中国経済の今後の動向が最大の鍵を握っていると思っています。その際、中国が今後大きな社会不安を招かず、持続的に成長していけるかどうかは中国の農村地帯が「経済的なフロンティア」になりうるか否かに掛かっていると言えると思います。中国共産党は元来農民とプロレタリアートの為の政党であった筈ですが、実際には建国以来の殆んどの期間農民は十分な政策的支援を受けてこなかったと言えるでしょう。胡錦濤総書記は2002年の就任以来「調和社会」の理念を掲げ、歴代政権の中では最も真剣に「三農問題」に取り組んでおられると見受けます。しかしながら、これまでのところ大きな効果は見られずむしろ都市と農村の格差は拡大し続けているのが現状です。今年に入り私は中国政府が成都と重慶をモデル都市として「都市・農村一体改革」なる実験に取り組んでいると聞き大変興味をそそられまして、10月上旬に重慶を訪問し、モデル地区の一つである重慶市郊外の九龍坡地区を見学すると共に重慶市政府から種々説明も受けました。その直後の中国共産党の「三中全会」で農村振興策が突っ込んで議論され「農地使用権の流通を認める」との発表が為されたのは皆様もご記憶に新しいことと思います。「三農問題」は非常に複雑で私も全容を理解しているとは到底言えませんが、今回の「都市・農村一体改革」の要点を整理すると、(1)「農業の活性化」(農民の農地や宅地の使用権を長期化・財産化することにより安心して計画的に農業に取り組める。土地使用権の売買・賃貸などの流通を認めることにより大規模農業を促す) (2)「都市化・工業化への円滑な移行」(農村人口は基本的に過剰。離農者が土地使用権の正当な対価を持って都市に移住し都市での住宅や社会保障を手に入れる。農村と都市とで区分されている戸籍制度も一体化される)、ということだと理解しています。中国には、特に地方には、共産主義の古い理念や土地に絡む利権が残っていると聞いており、党内でも反対意見や慎重論が相当あった模様ですが、三中全会後にここまではっきりと方針が発表されたのには胡錦濤政権の強い意思が感じられます。時間は掛かるでしょうが中国の農村が新たな経済フロンティアとなっていくことに期待したいと思います。

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