米ヘリテージ財団の研究員で中国経済問題の専門家、デレク・シザーズ氏は6日、人民元切り上げで米国の雇用が促進されることはない。米国の雇用市場を改善するには財政赤字の削減に踏み切るしかない。人民元安が米国の対中貿易赤字の原因だとして中国が米国から働き口を奪っていると考える人が多いが、この考えは間違っているとの見解を示した。
デレク・シザーズ氏は、過去15年を振り返り、人民元高の時には対中貿易赤字は増えたり減ったりしていたが、人民元が切り上げられると貿易赤字は増加を続けたとし、1994年1月から1997年12月にかけ、人民元の対ドルレートは約5%切り上がったにもかかわらず、米国の対中貿易赤字は230億ドルから570億ドルにまで膨らんだと指摘した。一方08年7月以降人民元は切り上げられていないが、米国の対中貿易赤字は2270億ドルにまで減少した。こういった状況から見ても、為替相場が米中貿易に与える影響はさほど重要ではないことがわかる。本当に重要なのは米国の内需にある。米国の内需が伸びると対中貿易赤字が増えるのだ。
人民元高になっても米国の雇用が促進されるとは限らない。まず、対中貿易赤字が増えるのは、米国内の内需が伸びる時で、雇用は減るのではなく増える。次に、輸入が雇用減少につながっているという考え方にも無理がある。輸入によって物流、小売などでの雇用が増えるほか、資本流入によっても雇用が創出される。第三に、人民元の切り上げを迫るのは米国の雇用促進ではなく、中国と競争関係にあるベトナムやインドの雇用促進につながる。
長期的に見ると、米国の雇用を促進するには財政赤字の削減しかない。今最も米国経済の持続可能な繁栄を脅かしているのは政府の負債といえる。
「人民網日本語版」2010年4月8日