上海万博の開幕以来、「紫蚕島」(日本名・かいこじま)の愛称を持つ日本館は多くの観衆を引きつけている。「紫蚕島」は紫色のカイコのまゆのような外観で、「こころの和、わざの和」をテーマに、科学技術と環境や都市の関係に対する日本人の独特の理解を展示している。テーマの意味を推し広げて考えると、「紫蚕島」は日本の文化理念を際立たせると同時に、いくつかの中国的要素もはっきりと示しており、親近感とともに新鮮な感覚を覚える。
日本館の色は日本人の好む紫色だ。日本人は紫色を優雅で高貴な色と捉えている。聖徳太子の定めた「冠位十二階」の最高位も紫色。「紫」姓は決して多くはないが、日本人にとっては女流作家の紫式部だけでも、「紫」に対して深い好感を抱くに十分だ。紫式部の書いた「源氏物語」は日本の「紅楼夢」と称される。中国の古人は「紫気東来」(紫の瑞気が東方よりたなびく)を吉祥と考えていた。杜甫にも「東来紫気満函関」との詩句がある。伝説の仙人の住む場所は「紫海」と称され、帝王の宮殿は「紫極」「紫禁」と称される。故宮を「紫禁城」と呼ぶのもこのためだ。
トキも日本館に見られる中国的要素の1つだ。トキは新潟県の「県鳥」で、佐渡、輪島両市の「市鳥」。国鳥ではないものの、日本のシンボルと認識されている。これはトキと日本人の生活との緊密な関係を示すものだ。日本の古典に「桃花鳥」と記されたトキは、1990年代に絶滅しかけ、2003年に最後の1羽が死に、完全に絶滅してしまった。中国は1999年につがいのトキを日本に贈呈。これ以降、中国産トキは日本で百数十羽にまで繁殖した。トキはすでに中日友好のシンボルとなっている。日本館では、日本の伝統劇「能」と中国の昆曲のコラボレーションによって、両国によるトキの共同保護の物語が演じられており、内容と形式が完璧にマッチしている。
日本館の塚本弘総代表は「万博を通じて中国の人々に本当の日本を知ってもらいたい。上海万博を訪れる日本人は100万人に達すると予想されている。これは間違いなく、日本人も本当の中国を知りたいと渇望していることの現われではないだろうか。中日両国には輝かしい交流の歴史がある。今後も互いを参考にし、学び合うことを一層重視するようになるはずだ」と述べた。
「人民網日本語版」2010年5月12日