第2回中米戦略・経済対話が25日に終了し、米国が中国の市場経済国としての地位を迅速に承認することで双方は合意した。では、中国にとって、その「利」と「弊」はそれぞれなんだろうか。
対外貿易大学の趙忠秀教授は、「『完全な市場経済国』と認められるかどうかは、中国の輸出企業が反ダンピング調査を受ける際の境遇に直接にかかわる」と説明する。
一国の製品が「正常な価値」を下回る価格で他国に輸出し、しかもその国の関連業界に損害をもたらす行為は、世界貿易機関によりダンピングと定義されている。ダンピング企業に認定されれば、コストと価格の差に基づき、輸入国により懲罰的関税が課される。そして一部の国では、「非市場経済国」の企業に対し、その国の実際のコストでなく、まったく関係ない第三国の市場価格でその製品の正常価格を決定することができる。第三国の製品のコストは通常、中国企業より高いため、反ダンピング訴訟の中で中国企業が敗訴するケースは多い。たとえば、中米間のテレビの反ダンピング訴訟で、米国はインドを「第三国」に選択した。インドのテレビのコストは中国の6倍も高いため、中国のテレビのコストも高く見積もられ、訴訟の中で中国は不利な立場に立たされる。
世界最大の経済国である米国は、中国企業を相手取り多くの反ダンピング訴訟を起こしている。もし米国が中国を市場経済国と認めれば、他国の対中貿易政策にとって大きな示唆的な意義を持つと見られている。
1995年に世界貿易機関が発足して以来、反ダンピング訴訟の7分の1は中国製品が対象となっている。中国は数年続けて反ダンピング調査を最も多く受ける国となっており、現在、世界の3分の1の反ダンピングの訴訟相手が中国である。2006年から2009年まで、米国が起こした訴訟額はすでに60億ドルを超え、中国企業は数億ドルの反ダンピング関税の納付を強いられている。
趙忠秀教授は、「米国は中国の市場経済国の地位を認めることを表明し、協力を求める善意を伝えている」とするが、「その見返りとして、新エネルギー、ハイテク製品、金融などのハイレベルサービスなど、米国が優位に立つ分野で、中国に輸入拡大や市場参入のハードルを下げるよう求めてくるだろう」と語った。
また、完全な市場経済国と認定されるのを急ぐ必要はないとする専門家もいる。反ダンピング訴訟で中国企業が公平に取り扱われても、かわりに反補助金調査に直面するおそれがある。
米国の「反補助金法」を例に挙げると、反ダンピング法は非市場経済国には適用されず、市場経済導入の業界だけに適用される。つまり、貿易救済手段としての反補助金調査は、「非市場経済国」である中国の大多数の企業には適用できない。もし反補助金調査を起こすのであれば、まず関連業界を「市場経済導入の業界」に認定しなければならない。米国にとっては、中国企業に対して反ダンピング調査という手段をとり貿易救済を行うしか方法はない。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2010年5月27日