アジア開発銀行(ADB)のチーフエコノミスト、李鐘和氏は7月13日、「中国でインフレリスクが高まっているが、依然として調整可能な範囲にある。むしろ警戒が必要なのは日増しに高まる資産バブルのリスクだ」との認識を示した。国際金融報が伝えた。
上半期の中国経済に関するデータが発表されるにあたり、李氏も独自の見解を表明。欧州の財政危機の影響で世界経済の回復が多くの不確定要素に直面しているなか、上半期の中国経済は依然として急速な成長を維持し、通年での経済成長率は9%から10%になる見通しだと語った。
一方で、経済速度のリバウンドが資産価格の高騰とインフレリスクの上昇を招くことは避けられないと指摘。上半期は中国の一部の都市で不動産価格が急上昇したことで、住民の住宅購入が難しくなり、政府のマクロコントロールも難易度が増しているとの見方を示した。
李氏によると、欧州の財政危機が依然として蔓延しているが、世界経済は全体的に見るとすでに回復の軌道に入っている。拡張的な財政・通貨政策が通常の状態に戻るにつれ、中国も回復の過程で現れる新たな課題に警戒する必要があるという。
李氏は中国が現在抱える最大の課題について、外需市場の低迷が続くなか、いかに内需市場と民間投資を盛り上げ、それを政府の景気刺激策につなげることで経済成長を維持するかだとした。「この目標の実現には、経済構造の調整と内需拡大の重視、経済成長のさらなる促進、および住民の生活水準の向上が急務だ」。
アジア開発銀行が発表した最近のアジア経済見通し(2010年)によると、投資を中心とした中国の既存の経済成長モデルでは、支出法GDP(国民総生産)に占める住民消費の割合が過去20年で15.8ポイント低下している。
李氏は、消費を刺激するには社会保障体制を充実化して教育や医療、保障性住宅など公共製品を的確に提供するとともに、住民の所得水準を引き続き高める必要があると指摘した。
「人民網日本語版」2010年7月15日