▽日本にならい3つの課題を克服
神戸大学の石原享一教授によると、日本で中産階級が多数を占める原因は主に次の2点にある。まず、個人所得税の累進税率が最高75%という税制度により、所得の再分配がなされている。集められた税金は教育や社会保障を充実させるための財源となっている。次に、日本企業では経営者と一般の従業員との給与の差がそれほど大きくない。1960年の差はわずか3倍程度だった。こうしたことから、日本式の経営には3つの特徴があるといえる。すなわち終身雇用、年功序列型賃金、労働組合の組織下で一致協力して企業の発展をはかる企業文化だ。
石原教授は「現在の中国が実現に努力しなくてはならない経済発展計画は、全体的な数量の拡大ではなく、質の発展だ。中産階級が増加して所得格差が縮まったならば、次は3つの重要な課題に直面することになる。最初に直面するのは累進税制を通じた所得再分配の問題だ。次は教育と社会保障の充実だ。最後は社会的責任を第一とする企業文化の育成だ」と話す。
石原教授はさらに踏み込んで次のように話す。中国が現在検討中の国民所得倍増計画は、個人所得の増加、あるいは給与の引き上げを目標としている。こうした構想それ自体は、従来の国内総生産(GDP)4倍増というマクロ目標に一歩近づくものだ。だが経済成長だけで構想を実現させることは難しい。すでに述べた所得の再分配構想と企業文化の普及が必要になる。また現在の中国では、バブル経済の進行や地域間所得格差の拡大の問題が懸念される。
「人民網日本語版」2010年7月20日