最低賃金引き上げ、中国にプラス・世界に害なし

最低賃金引き上げ、中国にプラス・世界に害なし。

タグ: 中国 賃金

発信時間: 2010-07-28 15:44:45 | チャイナネット | 編集者にメールを送る

例を挙げてみる。仮に中国が07年10月に給与水準を25%引き上げたとしても(以下に挙げる理由から、こうした仮定は成り立たないが)、今年の平均給与は1時間あたりわずか1.98ドルで、米国の同期の水準の4%にとどまる。中国と主要工業国との給与の開きを縮小する上では、ほとんど「焼け石に水」だ。中国と先進国との給与の格差も同様だ。仮に今年、中国の製造業の従業員への給与が1時間あたり1.98ドルに引き上げられたとしても、日本を除く東アジアの15%に満たず、メキシコのわずか50%に過ぎない。

強調しなくてはならないのは、中国の現在の状況からいって、最低給与の上昇幅を25%とすることは根本的に実現不可能だということだ。一部の省では最低給与の上昇幅が25%に達しているが、目を全国に移せば、3分の2以上の労働者の給与水準は、今もなお最低賃金以下に抑えられている。

おまけに最近中国政府が最低賃金の基準を引き上げたことは、高所得層には何の影響も与えず、引き上げの恩恵を最も受けるのは低所得層だ。

また今回の給与引き上げムードの背景には、中国全体の生産力の向上がある。世界銀行のデータによると、1990年以来、中国製造業の生産力の年増加率は10%から15%の間を維持しているが、生産力の伸びが従業員の給与には十分に反映されていない。このことから中国では国内総生産(GDP)1万元あたりの労働力コストの伸びが緩やかであることがわかり、また今回の給与上昇は低廉な労働力という中国の競争力を弱めるものではないことがわかる。

このほか、今回の給与上昇が中国の競争力に与える影響については、中国の備える優位点を考慮すべきだ。たとえば、巨大な生産規模、整ったインフラ設備、強大な汎アジア流通チェーン、これから採用される最先端の生産技術などだ。こうした非常に重要な分野で、中国は優位点をまったく失っていない。

最後に強調すべき点は、最低給与水準の引き上げは、中国が消費型経済に転換する上で重要な戦略の一つだということだ。中国にとって、購買力の圧倒的な不足が、経済発展を阻害する大きな障害となっている。現在、中国の個人所得がGDPに占める割合は40%で、世界レベルにははるかに及ばず、05年の51%から10ポイントも低下している。経済のバランスの重要性を考慮して、中国はこうした状況を変えるために努力する必要がある。

このたびの動きもまた、中国の発展に向けた一つのチャンスだ。現在の給与の伸びがGDPの伸びに追いついていないことを考慮して、中国は今後、GDPに占める個人所得の割合を一層拡大し、世帯購買力の向上に向けて基礎固めをする必要がある。これもGDPにおける消費の割合を高める上で極めて重要なことだ。09年の消費の対GDP貢献度はわずか36%だった。

結局のところ、国際社会は中国の安価な労働力の時代が終わりを告げたと悲壮感に浸る必要はない。それよりも中国が消費型経済への転換で行っている努力に注意を払うべきだ。また中国がかねてより期待する経済状況が、グローバル経済にもたらすであろう建設的な役割にも思いを馳せるべきだ。

*筆者のローチ氏はモルガン・スタンレーのチーフエコノミストで、「次のアジア」の著者

「人民網日本語版」2010年7月28日

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