これは両国の文化的背景と関係があるという見方がある。日本は西側文化の影響を強く受けているが、中国では結婚して独立するという伝統的な観念に強く影響を受けている。中国人は、家がなければ幸せになれない、家があって初めて結婚できる、と考えるという。日本のあるサイトが幸福と家の有無との関連について調査したところ、幸福と家とは関係があると回答した日本人は1割にも満たなかった。一方、中国人は回答者の8割以上が関係があると回答した。
中国の若者は家を手に入れなければ結婚できないというが、これははたして伝統的な観念の影響だろうか。このいわゆる伝統はいつ頃始まった伝統なのだろうか。筆者は1970年代末に生まれ、両親は7平方メートルの1ルームに住んでいた。これは母の勤務先から支給された単身者用の宿舎で、当時、若者の多くはこのような単身者用の宿舎で結婚生活を送っていた。そのころは福祉対策として勤務先から住まいが支給され、年功序列で住まいが決められていた。
ある勤務先では、従業員は結婚しなければ住まいが支給されなかった。その後、分譲住宅が徐々に市場に出回るようになり、そのころに家を買ったのは、自分で商売をしていて勤務先がないという人たちだった。私のいとこは1990年代に結婚し、勤務先から住まいを支給されるまであと少し待たなければならなかったとしたら、結婚後も両親と一緒に暮らすはずだった。このようにあれこれと書いていると、いわゆる中国の伝統的観念が家を手に入れられなければ結婚出来ないと規定しているとは思えない。少なくとも私より年長の人たちの様子をみると、住宅購入が結婚の前提条件にはなっていない。実際、分譲住宅の開発も販売も改革開放以降のことだ。ここからわかることは、若者は伝統的な観念の影響を受けて、自分の家を買わなければ結婚できないと考えている、というのはまったくニセの命題だということだ。それでは日本の若者はなぜ家よりも携帯電話の新機種に関心を寄せるのだろうか。中国の若者はなぜ幸福と家とは直接関係があると考えるのだろうか。