米名門映画会社メトロ・ゴールドウィン・メイヤー(MGM)はやはり破綻した。MGMの破産は米国の裏側に位置する中国でもかなりの騒ぎとなった。
「年老いて衰えてしまった」MGMと比べ、中国の映画は市場規模にせよ融資手段や技術革新にせよ、まだまだ「小学生」レベルに過ぎない。そのため、今後の活躍が期待されるこの「小学生」は、もしかするとMGM倒産から何らかの有力な教訓を得られるのではないだろうか。
教訓一:政策指導の決定作用
MGM倒産危機の声は一、二年前から上がっていた。特に米国の誤った政策による金融危機以来、その基幹産業である映画産業は大きなダメージをうけていた。中国映画家協会が公表した最新の研究報告書によれば、世界の劇映画生産量は、2007年から2009年にかけて、欧米を中心として、100部/年のスピードで激減している。現在の劣悪な経済環境の下では、MGM倒産も決して珍しいことではない。
それに対し、中国の状況はというと、国家による一連の「文化産業新政策」、特に全面的な文化体制改革の推進に伴い、映画産業は金融危機期間中にも上昇を続け、生産量の増加はもちろん、国産映画の興行収入も6年連続で輸入映画を上回っている。
しかし、WTO加入により、2011年3月より中国は米国に対する娯楽関連製品市場開放を更に拡大する予定である。国有映画配信会社の輸入権利を2社分のみにし、更に毎年20作品のペースで利益配分方式の外国映画を輸入しなければならない。米映画会社は今後、輸入映画で協力パートナーとなる中国国内企業を自由に選択する権利を得る。
となると、中国の国産映画を守ってきた保護政策という形での「資本」は、そろそろ底を尽きる。その時、市場は完全に開放され、国内外の映画は真っ向勝負で戦うことになる。今後の政策的環境が、中国映画にかなりのダメージを与えることは間違いない。そのため、今後の激しい競争や挑戦に備え、「ポストWTO時代」における中国映画の指導方針をいち早く検討することが急務と言える。
教訓二:産業チェーンの拡張
周知の通り、「投資融資→映画制作→発行→複数映画館の連携→派生商品」という映画産業チェーンにおいては、その最も長いチェーンを掌握した者こそが、低リスクで、大きな収益を得られる。
MGMはかつてハリウッドにおいて最も影響力のある映画会社であり、制作、発行、放映を一手に行っていた。しかし、前世紀40年代末に、様々な事情によって制作に重心を置き、その他の業務内容から撤退せざるを得なくなった。この頃、タイムワーナー社をはじめとする多くの映画会社が映画産業の「連鎖効果」に着目し、プロダクト・プレイスメント、DVD、玩具等の派生商品開発や、ディズニーランド建設、連携映画館の拡張等、さまざまな手法で産業チェーンを拡大し、MGMの生存空間を押し狭めていった。
中国はというと、中国電影集団公司、華誼兄弟伝媒等の映画会社が、特に連携映画館の建設、映画音楽、インターネットゲームなど派生商品開発の領域で産業チェーン拡張を加速させている。しかし、全体的に見た場合、中国映画の産業チェーンの長さや創意工夫能力、技術レベルには致命的な欠陥が存在している。一つは人的資源の不足であり、もう一つは、海賊版の氾濫である。これらは産業チェーンを構築する社会的生態を脅かすものである。従って、早急に関連の政策法規体系や市場監視システム、市場仲介システムを整備する必要がある。
教訓三:トラスト化の回避
MGMが制作領域に立ち戻らざるをえなくなった理由は、まさに同社がかつて全米の映画産業チェーンにおける様々な部分を独占していたためである。1948年、反トラスト法は米映画業界にも波及し、当時大きな顔をしていたMGMは、その格好の標的となった。つまり、いかに産業チェーンの拡張と業界独占取締りのバランスをとるかが、米関係部門の半世紀以上にわたる大きな課題であった。
中国はというと、映画産業は全体的に繁栄しているものの、すでに業界独占がその姿を現している。例えば、同一会社に所属する、或いは複数社の映画制作者、発行者、連携映画館は、その上映回数、宣伝戦略、配信時間、チケット価格の設定、上映時期、放映頻度などの面において、独占的連盟を形成している。「少数の大作が天下を取り、低コスト映画は生存不可」のような勢力構造が出来上がり、「いつも少数の映画が興行収入記録を更新、その他多数の映画は利益なし」という窮地に陥っている。これは今後の中国映画産業発展にとって極めて不利な状況である。そのため、今後、映画製作後の段階やその手法を的確に導いていくことや、映画の上映期間を合理的に調整すること、また文芸類、スリラー映画類、喜劇等、タイプ別連携映画館システムの構築を加速することで、映画界が百花斉放の発展を遂げる枠組み作りを行うことが関係政府部門の急務である。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2010年11月8日