しかし、邱先生は謙虚にも、自分の数々の失敗例も開陳し、「人は神にあらず」といっておられるが、考えてみても分かるようにノーベル賞受賞者が参加しているファンドですら、相場の読み違いから破綻してしまった実例があるように、ビジネスの世界を泳ぎ渡ることは並大抵のことではない。それでも、「中国崩壊論」が喧伝されるご時勢に、二十年も前から、今のBRICSの芽とも言える中国、ロシア、インドの発展を予言した邱先生の確かな眼力は大いに参考に値する。かつて、中国の改革、開放に大きく貢献した谷牧元副総理も、邱先生と会見した際に、邱先生とビジネス談義をしたことも、邱先生の本の一節にある。私はいろいろなエコノミストの本とともに、実戦の書とも言える邱先生の本にも大いに興味を覚えている。
最近、日本訪問の際に買った「一番悪いときが一番のチャンス」という文庫本は、私は少なくとも十回は読んだ。邱先生のアメリカ経済、アジア経済危機、日本のバブル経済についての話はまったくウーンとうなりたくなる。特に邱先生の香港と大陸についてのご高説は、私は大いに感銘するところがあった。もちろん、私は曲がりなりにも中国のジャーナリストして、「硬派」の部類に入るメディアで暮らしてきた人間なので、邱先生と同じ構文でこのテーマについて述べることは控えるが、少し言い方を変えさせてもらうならば、GDPで一応日本を抜いた中国はやがて、1人当たりのGDPでもっと前の方へ行くことはまちがいない。つまり、大陸部の生活レベルもだんだんと向上するに違いないと信じている。現に私の家族の中にはもうクルマを2台もっている人もいる。したがって、邱先生の世界経済についてのご高説にはいつも脱帽して参考にしている。特に第一線を引退してからは、後顧の憂いなき自由業者としてジャーナリズム世界を漫遊しているが、その際、邱先生の本は再々読に値するガイドブックだと思っている。
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2011年4月21日