国際通貨基金(IMF)のストロスカーン専務理事が嫌疑的侵犯により辞任に追い込まれたことで、後任争いが激化している。これは、主要先進国と新興経済国の間の「世界経済統治権」争いとも見ることができる。しかし、新興経済国がどのようにして、世界経済における「被指導者」から「指導者」への華麗な変身をとげるのかを考えるとき、難題は山積していると言わざるをえない。
中国がまさしくこの典型例である。WTOに加入して以来、中国は経済と貿易のめざましい成長で国際経済での発言権を大きく強めたとは言え、世界第二の経済大国であり世界一の貿易国として、まだまだ釣りあうものは得ていない。この意味で、中国はいまだ西側諸国主導の現代「世界経済統治」における「被指導者」に甘んじているのである。
このような現状は、次の三つの要因によってもたらされている。
第一に、60年余り続く現在の国際経済制度には周到な利益分配構造が内包されており、新参者がその利益の一部を分けてもらおうと思っても、既存利益を得るアメリカや日本、ヨーロッパ諸国の様々な妨害にあう仕組みになっているという側面がある。実際問題として、純粋に物ごとの正否や道徳的観点からこの国家間点取りゲームを論じることは現実的でない。もちろん、国がどれほどの経済力を持つかが国際規則の制定権を得る際の大きな要素になるのは確かだが、その経済力をどう行使するかは熟考する必要があり、実力さえあれば自動的に権力が手に入るというものではない。国際規則に対する知識や理解も重要である。