香港美羅針織工場の社長である林宣武氏は、東莞市の工場にわずか150名の従業員しかいないのは、「人を雇いたくてもなかなか集まらないから」であると話す。この問題は広東省に限ったことではない。同会社は江西省にも工場を持っているが、そこの従業員もわずか250名。毎年、地元の政府幹部に「会社で何か必要なものはあるか」と聞かれるが、「従業員がほしい」と林氏はいつも答えている。他の政府職員は皆冗談だと思っているようだ。
香港美羅針織工場では過去と未来が共存する光景が見られる。一階には近未来の宇宙時代のようなメリヤス機があるが、二階には150名の機械に向かって作業する従業員がいる。彼らはカシミアを縫合したり、作り上げた製品にアイロンをかけたりしている。カシミアを縫合するのは労働集約型の作業だが、工場ではこの分野で熟練した技術を持つ従業員にそれ相応の給料を支払っている。この技術が必要な工程を機械化する予定はまだないという。
中国の輸出業を牽引する広東省では、数多くの工場が香港と台湾からの企業家によって創設、経営されている。彼らは、オートマチック化とロボット技術は中国工業の競争力を保つための一つの道だと認識し始めている。だが、こうした転換は短時間でできるものではない。機械によるオートマチック化の生産を実現するためには大量の資本投資が必要であるだけではなく、中国の出稼ぎ労働者は腕が良く、勤勉であるため、彼らの作業の一部は現時点では、ロボットで代替することができないのである。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2012年10月10日