安倍晋三氏が勝利し、円相場の行方が市場の関心を集めている。国外、国内ともに円高の圧力がかかる中、日本が「失われた20年」を脱出できるかどうかはいまだ未知数である。 現在の円相場は1ドル80円以上にまで下落している。しかし長期的に見た場合、依然として円高が続きそうだ。
「任重くして道遠し」の安倍晋三氏 安倍氏の当選で円相場は急変した。12月16日に総選挙が終わり、自民党を率いる安倍晋三氏が再び勝利した。勝利を受けての演説で安倍氏は、「技術力衰退」の現状をいち早く脱するため、大規模な公共投資を行い、無制限での金融緩和政策を行うことを明らかにした。力強い金融緩和政策提言により、日本の株式市場や債券市場が大きく動いた。対ドル円相場は大幅に円安に振れ、ショートおよび空売りでの取引が急増した。これは今後のさらなる円安に対する期待の表れだろう。
とはいえ、安倍氏が推進する金融政策に新味はない。まず日銀は元々、無制限での資産売買を継続していた。次に、日銀がインフレターゲットの数値を上げても、実質的な効果は大きくない。最後に、日銀総裁を換えても、金融政策を急激に変更するのは難しい。さらに、いま日本が実行できる政策手段は非常に限られている。更なる財政出動は日銀の赤字が膨らませるし、それに反対する政治勢力も軽視できないだろう。
強含みの円は今後も続く 日本が「強すぎる円」からの脱却を図るためには、以下のような方策を採るしか道はない。
第一に、日本企業の労働生産率をさらに向上させることである。
第二に、日本が産業チェーン上における付加価値をさらに高めることである。産業チェーン上における地位が高まるほど、輸出価格の高騰や下落で悩まされることが少なくなる。
第三に、日銀が無制限に為替相場に関与することである。日本政府が忌憚なく国内通貨政策の自主性を阻むことができ、同時に他国政府が日本の政策を放任するならば、日本はペッグ制に似た方式によって円相場を一定のレートで維持することができる。
第四に、諸国が無条件で自国通貨の対日為替レートを引き上げることである。
第一の条件として提示した日本の労働生産率は、他の先進国と比較して大差ない。短期間で向上させる余地は少ない。
第二の条件に関しては、2011年の大震災後、日本企業は核心となる技術や研究開発拠点を海外に移す現象が加速している。日本では産業空洞化が加速しており、日本が産業チェーン上で優位に立つのはますます難しくなっている。
第三の条件に関しては、日本政府の為替関与は疑いなく国際社会の大きな圧力にさらされる。
第四の条件である、円高を止めたいという希望を他国の貨幣上昇に託すという発想は、夢物語以外のなにものでもない。逆にもし今後、欧州債務危機が再燃すれば、新たな円高圧力の要素となるだろう。そのため、中長期で見た場合、円高傾向は続くことになる。今後も日本政府は円高で悩まされ続けるだろう。(光大証券チーフエコノミスト・徐高)
「中国網日本語版(チャイナネット)」2012年12月25日