所得分配をめぐってもこれとよく似た難しさがみられる。たとえば一部の地方での給与の団体交渉では、労使関係のバランスをはかる制度の未整備に外部の経済環境のマイナス要因が加わって、実際には交渉が空転しており、第一線で働く労働者の権利を守るという役目が果たされていない。
現実に起こっている問題から、所得分配の格差のめぐって、今、次のような難しい問題を抱えていることがわかる。「下を引き上げ」ようとしても上位法によって法的な支持を行うことができず、「中を増や」そうとしても税制度が整備されておらず、「上を抑え」ようしても政策措置が整っていない、という問題だ。よって所得格差の拡大をくい止めるカギや突破口は、上部についての計画設計を改善し、制度に基づく供給を増やし、総合的な統治を実現させることにある。中国共産党第18回全国代表大会(十八大)で指摘されたように、所得分配制度の改革を深化させ、国民の所得分配の状況を調整し、給与制度を改革し、所得分配の秩序を規範化し、発展の成果をより多くより公平に国民全体に行き渡らせる必要があるのだ。
現在、先進国のジニ係数は0.24ポイントから0.36ポイントの間に収まるのが一般的で、「中所得のわな」に陥った経済体は0.5ポイント前後をうろうろしている。過去の失敗例をみて、われわれはトラブルへの警戒の意識と問題意識をより強くもち、積極的な態度と慎重な政策で問題を深く探り、解決していかなければならない。
ジニ係数がもはや「神秘的な数字」ではなくなった今、所得分配改革の新たなスタートを切る必要がある。改革を進化させ、制度のイノベーションを進め、これまでの思想や観念による呪縛を勇気をもってうち破らなければ、すべての人が中国の発展によるプラスを享受することはできない。すべての人が発展の利益を享受できるようになることこそ、われわれの努力すべき方向性だ。