安倍首相がTPPに固執するのは明らかに経済面だけでなく、その背景に戦略的意図がある。「いったん交渉に参加すれば、日本は新たなルールづくりをリードできる」とはばかることなく直言する。日本がTPPに参加すれば、日米のGDP合計が参加国のGDP全体の91%を占め、TPPは事実上、日米の自由貿易協定(FTA)となる。日米は共同リーダーとなり、日本は米国のアジア太平洋戦略の助けを借りて経済的に中国に対して優位をキープし、中国の潜在的優位を削ぐことができる。
「財界の首相」といわれる経団連会長の米倉弘昌氏は「TPPに参加しなければ、日本は世界の孤児となる」と語る。日本が「世界の孤児」になるという表現は大げさにしても、実状からして「アジアの孤児」、「東アジアの孤児」になる可能性は十分ある。日本という古い資本主義国は状況が悪化する一方で、中国などアジアの新興市場は著しく成長している。また、日本は中国、韓国、ロシアと領土問題が存在し、北東アジアで日本は瀬戸際に向かっている。