新興国市場の度重なる「悲劇」を招いた要因について、アナリストは「新たな市場変動を触発する要因は二つある。一つは、アジアの新興国の内部問題が深刻であること。もう一つは、FRBが量的緩和を縮小する観測が強まる中、新興国からの資金流出が加速していることだ」との見方を示した。別の市場関係者は「FRBが量的緩和を縮小することに対する投資家の確信がますます強くなるなか、新興国経済の鈍化傾向が火に油を注ぎ、このところ、新興国市場から欧米市場への大規模な資金流失の動きはより一層顕著になっている」と指摘する。仮にFRBが以前示唆したように、9月に国債購入の規模を縮小するとすれば、アジア市場は深刻な資金流失に直面することになる。
経済学者は先般、金融市場が今注目しているのは、米国の量的緩和縮小と中国の経済成長の鈍化傾向である。双方とも新興国市場にとってはデメリットである。前者は米国への資金還流を招き、後者は新興国の輸出縮小を招き、経済成長に打撃を与える。
米金融大手シティグループは研究レポートで、「資金流出は新興国の株式市場の下落を招き、国債利回りを押し上げ、通貨安の加速などの一連の連鎖反応を引き起こす。それが更には、株価指数の変動をより一層助長する」と指摘している。
◆アジア金融危機が起こる可能性は小さい
新興国の経済情勢を楽観視できないなか、市場の懸念は高まっており、市場関係者の多くが1997年のような金融危機が再び発生するとの見方を示している。しかし、金融危機に陥る可能性は小さいと指摘する専門家もいる。
中国経済網の評論家である楊晨氏は「新たな金融危機が起きる可能性は徐々に拡大しているものの、FRBのよる量的緩和の縮小だけが引き金になる訳ではなく、最も根本的な要因は新興国市場そのものが抱える問題である。インドやロシア、ブラジルなどの経済は既に大幅な減速が進んでおり、なかでもインド経済の減速傾向は深刻である」と指摘する。
また、別のアナリストは「資金流出と長期的に存在している内部の構造的問題により、主要新興国の経済が直面するリスクは高まっている。しかし、1997年のアジア金融危機の時に比べ、主要国家の各経済・金融指標は大幅に改善しているため、新興国市場で大規模な金融危機が発生する可能性は小さい」との見方を示している。
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2013年8月24日