◆現在:富の自慢が尊重されない時代に
失われた10年を経て、当時の浮ついた熱狂的な心理が、日本社会からほぼ失われた。時々出現する成金も、羽振りの良さを示せなくなった。
日本人富豪のうち、高級車を運転する人は少ない。日本人は自動車などを、成功を示すステータスとしなくなった。自動車は交通手段に過ぎず、安全性と省エネ性が最優先されなければならない。
富豪の住宅はデザインがシンプルで、高額な高級ブランドの家具をこれ見よがしに室内に並べるのは「下品」とされている。日本の富豪の間では、「預金・住宅・肩書を持たない」という哲学が流行している。
ただ金と勢いがあるだけでは、日本で尊重・評価されがたい。日本社会が尊重するのは、どれほど成功していても贅沢をせず、普通の生活をする人だ。松下幸之助、盛田昭夫、稲盛和夫といったビジネス帝国を築いた人々が「神」として崇められているのは、ビジネス面の類まれな業績によるものである。しかしそれよりも重要なのは、彼らが人からの尊重を集める人生哲学を持っていることだ。