このほか、特筆すべきなのは、日本の製造業が強いのは、少数のいくつかの大企業を有しているだけでなく、規模は小さくても強い中小企業を数多く育ててきたことにも現れている。ニッチ市場で、トップシェアを占めているのも中小企業だ。そして、これが、いわゆる隠れた勝者となっている。2013年に大ブームとなったテレビドラマ「半沢直樹」では、中小企業の経営者である主人公の父親が、自社で研究開発した小さな樹脂のネジにこだわる姿が描かれていた。まさにこういった特殊分野に特化し、模倣されにくい、鮮明な特色を持つ製品を作り上げるぱっとしない中小企業が世界に誇る日本の製造業を支えてきたのだ。中国の中小企業の数は非常に多いが、独特な強みを持った企業はごくわずかしか存在しない。
最後に、触れざるを得ないのは、長い失われた時間を過ごしてきた日本の電機メーカーの復活がどうやらすでに始まりつつあることだ。日本の8大電機メーカーを例にあげると、近年不振の続く事業からの撤退やグループ再編などで組織のスリム化を進めるとともに営業コストを削減し、強い分野に力を注いだことで、ソニー以外の7社は、2013年度に黒字を計上した。特に、日立の営業利益は23年ぶりの営業最高益を記録した。これは、日本の製造業が復活の兆しを見せつつあるという縮図でもある。アベノミクスによる為替の円安や、規制改革、積極的な財政政策など一連の措置による刺激の効果もあり、日本の製造業は日本経済復活へのカンフル剤となっている。