TPPが貿易ルールに及ぼす影響は限定的だ。TPPの一部の参加国は、ルールの先進性を強調している。TPPの一部の規則、例えば労働基準、環境保護、知的財産権の保護などは、確かにその先進性を示している。しかしTPPの関連規則をよく読めば、その大多数が特に明らかな先進性を示していないことが分かる。例えばTPP参加国のビザ・衛生・防疫の措置、税関の手続き簡略化といった規定は、貿易の利便化を促進する互恵的措置に過ぎず、その他の国でも独自に実施できる。TPPはデジタル貿易の世界貿易における地位を強調しているが、中国を含む多くの貿易大国はこれをすでに充分に重視している。これはルール面のメリットを形成しない。
一部の規則に斬新さがあったとしても、最も理想的な唯一の規則とは限らない。TPPは参加国間のすべての自由貿易協定の規則をTPP版に合わせるよう規定しておらず、むしろ「TPPはその他の参加国間に存在する国際貿易協定、WTOやその他の二国間・地域内の協定と共存できる」ことを確認している。これはTPP参加国が、その他の国との間にTPPとは一致しない、さらには食い違う貿易協定を締結できることを意味する。その他の規則を採用する貿易協定も、同じく高い将来性を持つことになる。
また貿易ルールを見ると、TPPは参加国のみに適用される多国間規則にすぎない。現在と未来の国際貿易の主要ルールは、WTO規則だ。TPP参加国はこれをよく理解しており、そのため「WTOに悖る輸出入規制と関税を採用しないことに同意する」とし、貿易救済措置を講じる際にも「TPP参加国のWTO枠組み内の権利と義務に影響を及ぼさないこと」としている。これらはいずれも、TPP規則がWTO規則を基礎とし、その代わりにならないことを示している。(筆者:宋国友 上海大学シンクタンクアジア太平洋研究センター執行主任、復旦大学米国研究センター副主任)
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2015年10月9日