環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)はアジア太平洋地域の経済一体化の試みとして、国際貿易の発展の新たな趨勢を示している。これは確かに、並々ならぬことである。しかしTPPは多くの地域自由貿易協定のうちの一つに過ぎず、実際には特に変わった影響を及ぼすわけではなく、過度に誇張する必要はない。
TPPが国際貿易の成長を力強く促進することはない。米国や日本などの国は世界の重要な貿易国だが、TPPの多くの参加国は世界貿易において際立った地位を占めていない。全体的に見て、TPPが世界貿易にもたらす積極的な促進効果は限定的と言える。冷戦後の国際貿易の発展の経験から見ると、世界の貿易成長に対して重大な効果をもたらした出来事は、(1)1994年に終了したウルグアイ・ラウンドにおけるWTO設立の合意(2)中国の2001年のWTO加盟――の2件だ。この2件は統計的意義から、国際貿易額の急成長を力強くけん引し、世界経済とグローバル化の進展を推進した。TPPは一部のアジア太平洋諸国間の地域貿易協定に過ぎず、EUや中国といった世界の主要経済体が含まれず、国際貿易に及ぼす影響は自ずと限られている。
TPPは既存・未来の地域経済・貿易構造を変えがたい。アジア太平洋地域の貿易の現状は、地域内の各経済体の地理的位置、資源的条件、経済水準、分業の状況など、多くの要素によって決められている。これらの要素は長期的かつ根本的なものだ。しかも市場と資本は最終的に、貿易と投資そのものの収益性を見なければならない。TPPが持たらすメリットが、既存の貿易・投資モデルの利益を上回らなければ、市場と資本は既存の貿易・投資モデルを続け、TPPにわざわざ追随することはない。アジア太平洋の既存の経済・貿易構造を見ると、中国は貿易・投資の中心の一つになっている。これは数十年に渡る世界経済の分業・変化によって、自ずと形成された。中国の実力の強化に伴い、アジア太平洋のバリューチェーンにおける地位が向上し、地域の経済関係を構築する力を絶えず強めている。TPPが大きな衝撃をもたらすことはない。