量的緩和策(QE)により何とか運営を維持していた日本経済は、進むも引くもならぬ苦しい局面を迎えている。進めば深刻な財政の圧力に直面し、引けば「3本の矢」「新3本の矢」を実現できないという苦境に陥る。
量的緩和策、拡大は困難
最近、量的緩和策の拡大を主張する声が止まない。日本は9月中旬の金融政策決定会合で動きを見せなかったが、多くのアナリストは日銀が量的緩和策を拡大するという判断を据え置いている。英バークレイズ銀行は、日銀が量的緩和策を拡大する時期に関する予想を、10月30日に早めた。
中国現代国際関係研究院日本研究所研究員補佐の劉雲氏は、「日本が短期間内に量的緩和策を拡大する可能性は低い。これはより深刻な財政の圧力を意味するからだ」と分析した。
安倍政権は現在、深刻な財政の圧力を受けている。財務省が発表したデータによると、2015年3月末までの2014年度に、日本の「国の借金」は過去最高の1053兆4000億円に達した。高齢化の深刻化、政府の社会保障などの支出増により、2015年度の国の借金は1167兆1000億円に膨らむ見通しだ。財政の他にも景気低迷の圧力がある。日本の第2四半期の国内総生産(GDP)成長率は、年率換算で1.6%低下した。
劉氏は、「安倍政権はは強い経済、子育て支援、社会保障という新3本の矢を発表したが、2%という物価目標には触れなかった。また安倍政権はGDPをこれまでの500兆円から600兆円に拡大するという目標を打ち出した」と話した。
劉氏は、「2%の物価目標は現在の量的緩和策では実現できない。安倍政権は、焦点をGDP600兆円という目標に移し、物価問題を避けるしかなかった。目標は変わったが、量的緩和策の規模を維持し、名目GDPを3%にし、現状を見る限り困難な2%の物価目標を実現し、2021年に名目GDPを600兆円以上にすることで、安倍政権がどれほどの圧力を受けるかは想像に難くない」と指摘した。
安倍晋三首相が2012年末に就任してから、日銀が量的緩和策を推進したことで、日本の名目GDP成長率が5.8%に達し、2014年度のGDPが491兆円に達した。しかし事実は、このデータとは異なっている。日本のGDPは1994年度より1%減少しており、2015年4−6月にはさらに1.2%減少した。過去5年間の実質GDP成長率は平均で1.7%のみで、2021年までにGDP600兆円を実現するために必要な3.0%という成長率の半分ほどだ。