米国のアップルが、配車サービスを手がける中国の滴滴出行に10億米ドルを出資し、滴滴は再び資金を調達した。先週末に明らかとなったこのニュースが強い関心を集めている。アップルはなぜ、中国で初の投資対象に滴滴を選んだのか?一方の滴滴は、アップルから1社としては最大の出資を受けて、業界にどのような変化をもたらすのだろうか?
滴滴への投資、アップルは中国を意識
滴滴出行の資金調達が国内外の著名な金融・産業機関に支えられるなか、アップルが投じた10億米ドルは、滴滴がこれまでに受けた投資のうち1社当たりでは最大となる。10億米ドルはアップルにとって手元現金の0.5%に過ぎないが、今回の出資でアップルは滴滴の戦略投資家として騰訊(テンセント)、阿里巴巴(アリババ)などと共に滴滴の株主となった。
アップルはなぜ投資先として、同業で米国に本社がある「Uber(ウーバー)」ではなく、中国の滴滴を選んだのか?アップルのクックCEOは、滴滴が中国iOS開発者コミュニティの鋭いイノベーション精神を持っているためと説明。「滴滴は中国で、毎日1100万件超の受注があり、ユーザー3億人にサービスを提供している。今回の取引をまとめるのに22日間しかかからなかった」。この話から、アップルの意識は滴滴に代表される中国市場に向いていることが分かる。
米投資銀行のSterne Agee CRTは、投資家向けリポートで、中国のスマートフォン市場の影響を受け、アップルの中国での2016年度売上高が15%減少するとの予測を示した。「物言う株主」として知られるカール・アイカーン氏は4月末、アップルの中国事業の不確実性を考慮し、保有していたアップル株をすべて手放したことを明らかにした。「半年もしくは1年前と比べ、最近のアップルに改めて言うことは無く、一流の経営陣がいると思う。ただ、懸念されるのは中国側の姿勢だ」とアイカーン氏は説明している。今年4月にアップルは、中国でのiTunesムービーとiBookストアのサービスを停止。ジョブズ時代が終わった後、アップルに対するイノベーション不足と成長鈍化の疑念が世界的に広がり、資本市場のコンセンサスとなっていった。
今回の投資を通じ、アップルは中国で強大なパートナーによる支援を受けられるかもしれない。アリババとテンセントは、Apple Pay(アップルペイ)の普及を後押しする可能性がある。Apple Car(アップルカー)が自動車市場に参入する時には、滴滴の有する技術と中国ユーザーに対する理解度も、アップルに貴重な経験を提供するだろう。
各自が必要なものを取る、業界は突然変化
滴滴出行の関係者は、アップルと滴滴に多くの共通理念があると指摘。例として、ユーザー体験や製品の創造性を挙げ、アップルがパソコンとスマートフォンにイノベーションと変化をもたらしたのと同様に、滴滴も夢を持って偉大なイノベーション企業になりたいと話した。
また、米国上場を目指す滴滴にとって、アップルによる投資は中国や海外資本からの認識も高めることになる。滴滴はグローバル化を緩めず、これまでに「Lyft」、「Grab」、「0la」などの配車ソフト企業と越境提携を進めており、サービスのカバー率は世界人口の50%を超える見通しだ。
アップルによる今回の投資について、滴滴のライバルとなるウーバーのトラビク・カラニックCEOは、「僕の彼女もアップル株を持っているから、彼女は滴滴の株主になるね」とユーモアを交えて述べている。
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2016年5月17日