中国の債務問題が、世界の注目を集めている。中国の債務比率は高いのだろうか、危機は存在するのだろうか。中国社会科学院学部委員、国家金融・発展試験室理事長の李揚氏は15日、国務院新聞弁公室の記者会見で、「2015年末現在、中国の債務残高は168兆4800億元で、コントロール可能な範囲内だ。中国は債務リスクに対応する十分な資産を持ち、債務危機は存在しない」と述べた。
中国の債務比率は高いのか
国家金融・発展試験室の研究データによると、2015年末現在、中国の住民部門の債務比率は40%前後、金融部門は約21%、政府部門は約40%となっている。
李氏は、「この債務水準は、世界的に見ても高くない。中国政府の債務はコントロール可能な範囲内だ。2015年末現在、予算管理内の中央政府・地方政府債務は計26兆6600億元で、GDPの39.4%だった。地方融資プラットフォームの債務を加味し、より広範な統計方法を採用したとしても、政府の債務水準は56.8%で、EUの60%という警戒ラインを下回り、主要市場経済国および新興国の水準を下回る」と説明した。
専門家によると、日本の政府債務水準は200%以上、米国は120%以上、フランスは120%前後、ドイツは80%前後、ブラジルは100%前後。
李氏は市場で懸念されている地方政府の債務問題について、「地方政府の返済能力を判断する際には、債務比率という指標を用いる必要がある。債務比率が100%に満たなければ、返済可能ということだ。中国の2015年の地方政府債務比率は89.2%で、世界共通の警戒ラインを下回っている」と話した。
李氏は、「中国の債務問題のほとんどが、企業に集中している。中国企業の債務問題は注目すべきだ。2015年末現在、非金融企業部門の負債比率は131%に上る。融資プラットフォーム債務を加味するならば、この比率は156%に上がる。うち国有企業の負債比率が高い」と指摘した。
中国に債務危機は存在するか?
中国で債務危機が発生する可能性を評価するならば、債務そのものを分析するだけではなく、資産を検討する必要がある。李氏は、中国は債務リスクに対応する十分な資産を持っており、債務危機が発生する可能性は低いと判断した。
中国社会科学院の研究によると、広範な統計方法を用いるならば、中国の2014年の自己資本は227兆3000億元、債務は124兆元で、103兆3000億元のプラスだ。より狭い範囲の統計方法を用い、行政事業単位の国有資産を控除し、2014年の土地払下げ金を同年の国土資源性資産と置き換えるならば、中国の自己資本は152兆5000億元に減るが、なおも28兆5000億元のプラスだ。
李氏は、「大規模な債務不履行があったとしても、中国には十分な資産があり、国民経済に大きな悪影響を及ばさずして、適切に解決できる」と述べた。
李氏によると、中国の高い貯蓄率は、中国の債務問題解決を力強く支える。中国では毎年、GDPの5割に相当する貯蓄を投資に回す必要があるが、そうした場合、そのほとんどが国内の債務を形成する。高い貯蓄率により、中国の債務は国内の力で安定的に処理できる。
またほとんどの国と異なり、中国各級政府の債務は、主に投資を目的としている。李氏は、「そのため巨額の債務と同時に、中国の地方政府は大量の高品質の資産を把握している。これらの資産は未来の返済の信頼できる支えとなっており、中国で債務危機が生じる可能性を大きく引き下げている」と話した。
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2016年6月16日