中国の多くの都市では、「百脳匯」「パシフィックデジタルプラザ」など、「電脳街」と呼ばれる商業施設を目にすることができる。中に入ると、レノボやASUSなどのノートPCが並ぶ店、それからファーウェイなどのスマホ販売店が密集している。店内のレイアウトは異なるが、その雰囲気は東京の電気街、秋葉原に似ている。
しかし中国各地の電脳街は、没落している。上海屈指の繁華街、徐家匯の「美羅城」から、パソコン・スマホ販売店が10月中に撤退する予定だ。ここは飲食店や衣料品を中心とするフロアになるという。
美羅城だけではなく、隣接する「パシフィックデジタルプラザ2期」もすでに取り壊されており、新たな商業施設の建設が始まった。北京のシリコンバレーと呼ばれる中関村でも、「海竜電子城」が7月、17年の歴史に幕を下ろした。
電脳街が各地で衰退していることには、次のような原因がある。中国の個人消費は10%の成長率を維持しているが、うちオンライン取引が20-30%の成長率で、実店舗の客を奪っている。電脳街に行きパソコンなどの実物を見てから、割安なネット通販を利用する消費者が少なくない。
またテナント料の高騰という原因も想像できる。中国政府は不動産バブルを抑制する措置を絶えず打ち出しているが、上海や北京の中心地の地価が続騰している。ある日本系銀行は「(中国で)不動産価格から賃貸収入を引いて得られる収益率は、金利を下回る」と表明した。このような傾向が常態化し、賃料を引き上げるか高額で手放すかという、2つの選択肢しか残されていない。
薄利多売のパソコン販売業界は、大都市の繁華街のテナント料を支払えなくなっている。飲食店であれば、価格調整などの手段により、利益を管理する余地がある。中国人は消費財の価格を気にするが、飲食に金を惜しまない。
実店舗の衰退は、電脳街だけではない。マレーシアの大型百貨店、百盛商業集団は北京市で経営不振が続く商業施設を売却した。都市部の消費が飽和化するなか、消費者の好みがチェーン店や百貨店からネット通販に移るという現象が生じている。これは日本と共通している点だ。
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2016年11月5日