「環太平洋戦略的経済連携協定」(TPP)は最近、大きな障害に遭遇している。米国ホワイトハウス高官は、オバマ政権はすでに米国の政局の変化を認識しており、TPPの将来は次期大統領と国会の決定に委ねると語っている。これは、国会によるTPP批准の採決を任期中に促すという計画をオバマ大統領が断念したことを示している。大統領に当選したトランプ氏はすでにTPP不支持の立場を明確化しており、TPPはこれからかなりの長期間、座礁状態となるものと考えられる。
TPPの行き詰まりの原因はさまざまだ。第一に、その公平性や透明性、代表性には長期にわたって広範な疑念が示されている。加盟国がTPPの効果に疑いを持っていることから、各国の批准の進展には不確定要素が満ちている。第二に、TPPには先天的な欠陥があった。その中心的な目的は自由貿易や互恵協力の促進にはなく、加盟国は、米国によって重い戦略的責任を負わされることとなる。
米国は一方で、自らが国際ルールを掌握する武器としてTPPを使おうと目論んでいる。米国は2008年、シンガポールとニュージーランド、チリ、ブルネイの4カ国による「より緊密な経済連携協定」の交渉を土台としてTPPを打ち出し、オーストラリアとペルー、ベトナムを参加国として招き、交渉を主導し始めた。TPPは、マレーシアとカナダ、メキシコ、日本を吸収し、世界のGDP総額の40%、貿易額の3分の1を占めるようになった。設立されれば、史上最大の自由貿易協定となる。TPPは、労働条件や政府調達、国有企業、知的財産権、環境保護などの分野で苛酷とも言える「ハイスタンダード」を掲げた。見識のある人には、TPPを借りて世界の貿易や投資、サービスのルール作りをリードし、さらには世界貿易機関(WTO)を骨抜きにしようとする米国の意図は明らかだった。
もう一方で、米国はTPPを、「アジア太平洋へのリバランス」戦略の経済的な手がかりとしようとしている。オバマ大統領が任期中に推進したアジア太平洋戦略は、地域の政治・経済・安全などさまざまな方面での米国の「指導力」を維持し、中国に対する競争の構えを整えることをねらいとしていた。2015年10月、オバマ大統領は、TPP交渉の終了後、中国のような国に世界の貿易ルールを制定させるべきではなく、規則は米国によって制定されるべきだとの声明を発表した。米国はTPPの開放協力を標榜しながら、中国を排除しようとさまざまな手を打っているのである。
総合的に考えて、TPPの行き詰まりをもたらしたのは、米国の私心と私利だったということができる。TPPは、開放協力という時代の発展の潮流に反しており、秩序・公正・合理という国際経済の発展方向にも符合しておらず、人類の運命共同体の建設に益するものでもない。TPPで中国を封じ込めることはできない。中国は、10兆ドルのGDP規模を持つ世界第二のエコノミーであり、貨物貿易では世界一の大国である。世界各国は、中国の発展がもたらすチャンスに注目しており、世界経済の発展における中国の役割を重視している。
TPPが行き詰まりで、「アジア太平洋へのリバランス」の重要な経済的支柱は崩れた。米国の一部の人にとっては見たくないことだろうが、多くの米国人が真剣に考えるべきことだ。米国が「冷戦」に基づく思考や「ゼロサム」ゲームをやめ、協力とウィンウィン、共同発展の正しい道に戻ることを望む。(文:蘇暁暉・中国国際問題研究院国際戦略研究所副所長)
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2016年11月14日